神殺しのクロノスタシス3

「どうしよう…。どうしたら二人は仲良くなれるんだろう…」

嘆くように頭を抱えるシルナ。

「別に良いじゃないですか、無理して仲良くしなくても。彼は今、別の人と仲良くなりたくて大変なときなんですよ」

と、ナジュ。

誰だよ。その別の人って。

「でも!やっぱり仲良くして欲しいでしょ?折角令月君は心を開こうとしてるのに」

なおも食い下がるシルナに、イレースが冷たく言った。

「一方がいくら心を開こうとしても、もう片方が閉じてるんじゃ意味ないですよ。私だって、いくら前向きに考えても、パンダと分かり合おうなんて無謀を試すほど馬鹿じゃありませんし」

「イレースちゃん…。そのパンダってさ…私のことじゃないよね…?」

「…それでは、私は仕事がありますので」

「じゃ、僕もリリスとイチャついてくるんで」

「あっ!イレースちゃん!ナジュ君!」

イレースとナジュも、さっさと退室。

残されたのは、俺とシルナと令月の三人。だけ。

切ないな。

「…何で駄目なのかなぁ…」

落ち込むシルナ。

それはまぁ…しょうがないだろ。

すぐりも言ってたけど、誰も彼も、手を取り合えば仲良し、って訳にはいかないし。

それは、大人の世界でも子供の世界でも、同じことだろう?

ましてや、二人の間に因縁があれば、なおさら。

シルナだって、ヴァルシーナと仲良くしろと言われても無理だろう。

シルナがいくら心を開こうとしても、ヴァルシーナは絶対拒否するに決まってる。

それと同じだ。 

「ましてやすぐりは、ずーっと令月に劣等感抱きながら生きてきたんだろ?そんな相手と仲良くしろって言われても、素直には従えないだろ」

「それは…そうかもしれないけど…」

ましてや、普通の子でさえ難しい、思春期の年頃だしな。

すぐりも令月も、まともな育てられ方してないんだし。

「…僕が悪いから、『八千歳』に嫌われるのかな」

ポツリと呟く令月。

…可哀想。

「別にお前が悪い訳じゃないよ」

かと言って、すぐりが悪い訳でもないし。

「ボチボチ仲良くなっていけば良いよ。お前達なりにな」

「僕なりに…?」

「あぁ。お前なりにな」

「…分かった」

こくりと頷いた、令月の瞳に。

何かの決意が宿っていたことに、俺は気づいていなかった。