神殺しのクロノスタシス3

ナジュせんせーは、僕を「好き嫌いが多い」と言うけれど。

だって、みんな思わない?
 
ナスもトマトも、食感脳みそじゃん。

ぐじゅぐじゅしててさ。

噛んだら、中身がぐちゅって出てくるというか…。

元暗殺者が言うのもなんだけど、脳みそ食べてるみたいで気持ち悪い。

仕事柄、よく飛び散った脳みそとか見たことはある。

が、それを舐めて食べてみたいと思ったことは、一度もない。

自称サイコパスではあるけどさ、俺も。

人体食べようと思うほど、サイコパスではないよ。

それはもう、サイコパス通り越してカニバリズムだから。

そんな趣味はない。

それなのに。

脳みそを彷彿とさせる野菜を、ツキナは何が楽しくて育てているのだろうか。

脳みそ見たことないんだろうなぁ、ツキナ…。

とはいえ。

育てている様がとっても愛らしいので、そこはOK。

でも、それを食べさせられるのは、絶対NGである。

しかも、ナスのときは、かろうじて調理をしてくれた。

の、だが。

今回のトマトは、生で食べられる野菜だ。

人類は何故、トマトを生で食べようと思ったのか。

やめろ。

つーか、トマトそのものを食べるのをやめろ。

しかし、ツキナはそんな俺の心中など、知りもしないので。

「もう食べ頃だね〜。えいっ」

ツキナは、真っ赤に熟れたトマトを、茎からもぎ取った。

…やってしまった。

永遠に、そこに実らせておけば良かったものを。

もいでしまった。もいでしまったと言うのかツキナよ。

「わーい、今年一番のトマト一号!嬉しいね〜!」

「…そーだね…」

俺は棒読みで答えたが、ツキナは気づかない。

そして。

実は今俺が見つめているのは、嬉しそうなツキナの笑顔ではなく。

そのツキナの手のひらの中で、俺を嘲笑っている(ように見える)トマトであることも、ツキナは知らない。

知らないのは良いことだなー。

何でも知らないのは良いことだ。

知りたくないことばっかりだからな、世の中は。

「折角だから、えいって丸かじりしたいね!」

「…う、うん…」

丸かじりは良いんだけどさ。

いや良くないけど。

食べるのなら、俺じゃなくてツキナだけにしようよ。

「すぐり君、先に食べる?」

とんでもない。

「いやいや〜、どうぞツキナが。だってツキナが頑張って育てたんだから、トマトだってツキナに食べて欲しいでしょ」

そうであってくれ。な?頼むから。

「そうかな…」

「そーそー。だからツキナががぶっと…」

「あ!でも見て!こんなところに、ちょっと小さいけど、良い感じに熟れてるトマトがあるよ!」

おのれこのトマト。

俺に喧嘩を売ってるのか。

俺を誰だと思ってるんだ?枯らすぞ毒魔法で。

ちょっと小さいからって、容赦してくれたつもりか?

そんな容赦は願い下げだ。

「えいっ」

あぁっ。

ツキナは、二個目のトマトを茎からもぎ取った。

ツキナの両手に、大振りのトマトが二つ。

そしてそのうちの一つを、ツキナは俺に差し出してきた。

「はいっ、どーぞすぐり君。食べよっ」

「…そーだね…」

宇宙の神様。

信じてはいませんが、もしいるのなら。

今すぐここに、隕石でも落としてくれませんかね。