神殺しのクロノスタシス3

すぐりさんの心を読んで、僕は一瞬で事情を把握した。

そして、心底軽蔑した。

僕に軽蔑されるんだから、よっぽどだよ。

人生最大級クラスの屈辱と思え。

「…何の用ですか」

分かっていながら、一応聞く。

が、一瞬でそれが無意味なことだったと気づく。

「ツキナがさぁ〜!」

「あーはいはいもう何も言わなくて良いんで。分かってます、分かってます分かりましたよ」

読心魔法が使えない、可哀想な皆様に説明しよう。

すぐりさんに、今度は何があったのか。

一言で説明するならば。

「…あなた好き嫌い多過ぎでしょ!」

「知らないよ!そもそもジャマ王国じゃ食べる機会なんてなかったんだから、克服する機会もなかったんだもんね!」

開き直りやがるし。

そう。

すぐりさんが嫌いなのは、ナスだけではなかった。

トマトだ。

これから暑くなり、収穫期を迎えるトマト。

そのトマトさえ、すぐりさんは苦手で食べられないらしい。

それなのにツキナさんは、そんなことは当然知る由もなく。

「トマトの収穫がもうすぐだね〜!楽しみだね〜!」と、わくわくしているらしい。

で、この好き嫌い魔人すぐりさんは、内心戦慄しながら、「そーだね、楽しみだね〜…」とか言ってたらしい。

以上。すぐりさんの心の中。

「何なの?トマトって。あんな脳みそみたいな色と食感の食べ物を、よく食べようと思ったよね、人類は!アホなの!?」

すぐりさんは、脳みそに恨みでもあるのだろうか。

それとも単に、ぐじゅぐじゅ系の食べ物が嫌いなのだろうか。

「…すぐりさんって、豆腐好きですか?」

「は?とーふ?好きだけど」

「じゃあお粥とかは?」

「食べるよ?」

…。

「…ピーマン好きですか?」

「あんな脳みそみたいな形した種が入ってる野菜なんて、人類の食べ物じゃないでしょ!」

そうか。よく分かった。

君は、あれですね。

ぐじゅぐじゅした食べ物が嫌いって言うより。
 
野菜が嫌いなんだな。

しかも、子供が嫌いな野菜あるあるの野菜、全部駄目なんだ。

そして全てを脳みそに例えてる。

多分ザクロとかイチジクも嫌いなんだろう。「脳みそ!」とか言って。

しかしそれもまぁ、仕方ないのかもしれない。

令月さんも含めて、この人達、まともな教育というものを受けてないし。

まぁ僕も大概だけど。

そもそも、食事を摂るという習慣さえ、ルーデュニアに来るまではなかったのだ。

別に嫌いな食べ物があったって、本人も困らないし、誰も困らない。

食べる機会がないんだから、それも当然。

おまけに、好き嫌いを直そうとしてくれる人もいなかった訳だから、ますます好き嫌いは直らない。

食べなくても困らないんだから、無理に食べられるようになる必要がない。

故に。
 
すぐりさんの舌は、多分三歳児辺りの味覚で止まってしまっているのだろう。