神殺しのクロノスタシス3

「…」

学生鞄を持って、部屋を出ていこうとしたユイト君は。

ふと、足を止めた。

…?

「…?どうしたの?遅刻するよ」

「…なぁ、令月」

ユイト君は、不安そうな顔でこちらを振り向いた。

「本当に、具合悪いんだよな?」

「…え?」

いや…具合は悪くないけど。

でも…何で。

「何か…隠し事してる訳じゃないよ、な?」

僕は一瞬、ドキリとした。

何でそんなことを…。

「…隠し事?何で?」

「前の…俺の、前のルームメイトがそうだったんだよ」

前の…ルームメイト?

去年のってこと?

「隠し事して…。一人で抱え込んで…。俺はそれに気づけなくて、凄く後悔したことがあるんだ…」

「…」

「だから、もうあんな思いはしたくない…。令月、本当に…具合が悪いんだよな?」

「…」

…そう。

そんなことがあったの。

「…変なこと言うね、ユイト君」

そんなことがあったから、今度こそはルームメイトを助けようと、そう思ってくれてるんだね。

本当に…この学院の生徒達と来たら…。

「何も隠し事なんてしてない。本当に具合が悪いだけだよ」

だからこそ。

巻き込む訳にはいかないのだ。

こんな優しい人達を、僕なんかのせいで、傷つける訳にはいかないのだ。

「…分かった」

「早く行きなよ。本当に遅刻するよ」

「…うん。行ってくる」

「行ってらっしゃい」

君が帰ってくる頃には。

ちゃんと、全部終わらせておくから。

僕は、ベッドの中に忍ばせた小太刀を握り締めた。