神殺しのクロノスタシス3

「まぁ、良かったじゃないですか」

「…何がだよ…」

青ざめた顔のまま、すぐりさんが頭を上げた。

わー、死にそうな顔。

僕は死にませんけどね。

「ナス、乗り越えたんでしょう?」

「まーね…。残りのナスは…ご近所に配るんだって…」

本当に良かったですね。

「じゃあ明日は麻婆茄子ね!」とか言われたら、今頃すぐりさん。

青ざめるどころか、卒倒しかねなかったよ。

生きてて良かった。生きてるって素晴らしい。

僕以外はね。

「死ぬかと思った…」

「大丈夫ですよ」

死ぬかと思ってるうちは、死にませんから。

本当に死ぬときは、「あ、死んだ」と思いますから。

まぁ、僕は死なないんですけどね。

「とにかくナジュせんせー…。一応感謝してるよ…」

「ナスの克服は、結局出来ませんでしたけどねー」

直せる好き嫌いと、直せない好き嫌いがあることが分かった。

食べられないものは、どう美味しく調理しても食べられない。

「でも、大根おろし戦法を教えてくれたし…」

「あぁ…」

あれは、本当に思いつきでしたね。

「あれがなかったら…。本当に今頃死んでた…」

「そうですか」

ナスで死ねるなら、僕、こんなに苦労してないですけどね。

僕も、すぐりさんみたいに、死ぬほど嫌いな食べ物があればなぁ。

それで死ねたかもしれないのに。

冗談だけど。

「感謝してるよ…ナジュせんせー…」

「えぇ。まぁ存分に感謝してください。ついでに僕も、自分の株を上げさせてもらったので感謝してますよ」

「それじゃ…俺、帰る…」

「あ、はい。お気をつけて」

すぐりさんは、窓から飛び降りて出ていった。

あまりに気分が悪くて、そのまま墜落してるんじゃないかと思ったが。

そこは、さすがに元暗殺者。

しゅたっと着地して、無事に学生寮に帰っていった。

やれやれ、一件落着…。







…と、思っていた、翌日。