神殺しのクロノスタシス3

―――――――…一方、調理室では。

僕の作った料理を取り分けて、生徒達が食べ始めていた。

…すぐりさんを除いて、だが。

「何やってるんですか。ほら、あなたの為に用意したんですよ」

「…」

「あなたに食べてもらわなきゃ困るんですが」

「…俺、騙されないよ」

…はい?

「この料理さ…。メニューは豊富だけど…共通点あるよね」

ほう。

やはり気づくか。

ってか、気づいてもらわなければ困るのだが。

「全部にさー…。ナス、入ってるよね?」

「…ふふ」

ここにいる生徒のうち、すぐりさん以外の何人が気づいただろう。

このテーブルに乗っている料理には、全てナスが入っている。

それぞれ、姿形を変えて。

グラタンに使ったミートソースには、挽肉と共に刻んだナスが仕込んであるし。

ハンバーグにも、肉ダネの中に、玉ねぎと刻んだナスが仕込んである。

コロッケも同様。マッシュしたじゃがいもの中に、刻んだナスを仕込ませた。

ラタトゥイユやカレーにも、煮込んでトロトロになったナスが入ってあるし。

ピザに乗っているナスは、上にたっぷりチーズをかけることで、姿を隠している。

そう。

ここにある料理は全部、すぐりさんのナス嫌いを克服する為のメニューなのだ。

どれも細かく刻むか、他に味の強いものでナスの風味を誤魔化すか、原型を留めないほど煮込むことによって。

少しでも、食べやすさを向上させてみた次第である。

「涙ぐましいでしょう?ナス嫌いの生徒の為に、ここまでする教師なんて、僕の他にいませんよ」

「…とか言いながら、自分の株もちゃっかり上げてる癖にねー…」

ジトーッと、すぐりさんは僕を睨んだ。

心外だ。睨まれる筋合いはないですね。

ナスステーキに、ナスそのまんまの煮浸しを出しても良かったんだよ?

でも、ナス嫌いのすぐりさんの為を思ったからこそ。
 
こうして姿を変えて、食べやすいように工夫したのだ。

時間かかったんだぞ?

「って言うか、ナジュせんせーに、こんな特技があったとはねー…」

「でしょ?自分でも自分の才能に驚いてます。多分前世でも、嫁が破壊的な料理下手だったから、代わりに僕が料理上手になったんだろうなぁ」

ありがとう、前世の僕と嫁。

君達のお陰で、僕は未だに料理上手です。

さて、それはさておき。

「かなり『ナスっぽさ』は消えてるはずなんで」

「…」

「まぁ、試しに食べてみてくださいよ。騙されたと思って」

「…でもなー、俺、『騙されるな、疑え』って教育受けてきたから…」

あー、そうなんだっけ。

これだから、素直じゃない生徒は。

「ツキナさんの笑顔、見なくて良いんですか」

「…!」

ハッと顔を上げるすぐりさん。

更に。

「美味しい!」

「ナジュ先生、これ凄く美味しいですよ!」

「うまっ…。何だこれ、めっちゃ美味い」

通りすがりの生徒達、目を輝かせて絶賛。

な?

自分の才能に戦慄ですよ。

「だ、そうですよ。あなたもどうぞ」

「ううぅ…」

「これも、ツキナさんの笑顔の為の第一歩です。さぁ、踏み出すのです。愛する人の為に」

「…分かったよ」

渋々。

すぐりさんは、テーブルについた。