神殺しのクロノスタシス3

監視の目を潜り抜けて、再び学生寮に戻る。

自分の部屋に帰って、まず僕は、ルームメイトのユイト君の安否を確かめた。

彼は、相変わらず寝息を立てていた。

ひとまず、ホッとした。

殺されずに済んだようだ。

次に、僕は自分の勉強机の上を見た。

そこには、同じく見覚えのあるメモ用紙が置いてあった。

…ついさっき。

僕が外で、『八千歳』と話してる間に。

彼と一緒に来たもう一人が、ここに忍び込んだのだ。

そして、このメモを置いていった。

…ついで感覚で、ユイト君が殺されていてもおかしくなかったのだ。

僕が少しでも返答を間違えば、殺されてたかもしれない。

僕は暗がりの中で、メモを読んだ。

明日の正午に、指定されたポイントに来るよう指示されていた。

…ここで一騎討ちしようという訳か。

学院の敷地内では、横槍が入る。

だから、敢えて学院の外に呼び出すことにしたらしい。

正しい選択だ。

『八千歳』は、正しい選択をした。

じゃあ、僕は?

僕が取るべき、正しい選択は何だ?

「…」

ユイト君。

さっき殺されててもおかしくなかった。

シルナ学院長。

羽久。

イレース先生。

不死身先生。

天音先生。

僕は、僕を守ってくれるであろう人々の顔を思い浮かべた。

一人で背負うな、と言われた。

…じゃあ、僕の取るべき、正しい選択は?

「…僕は…」

…僕は、ライターで火をつけ、メモ用紙を燃やした。