神殺しのクロノスタシス3

シルナを暗殺しに来た令月が、シルナに絆されて『アメノミコト』を裏切り。

それに怒った『アメノミコト』が、令月を取り戻しに、イーニシュフェルト魔導学院を襲撃しに来たとき。

彼らは、ナジュの読心魔法を無効化する方法…。

心を閉ざす方法。自分の心に、仮面を被る方法を知らなかった。

そもそも令月が、最初にシルナを狙って暗殺しに来たとき。

令月は、ナジュの存在を知りもしなかった。

ナジュが読心魔法の使い手であることを、知らなかったのだ。

そして、その読心魔法の弱点も知らなかった。

もし知っていたのなら、令月だって、すぐりと同じく、対策をしていたはず。

すぐりは自分を卑下するが、すぐりと令月の実力は、ほとんど拮抗していると言って良い。

すぐりが出来ることは、令月にも出来たはず。

令月に限って、心の仮面の被り方が分からなくて出来ませんでした、ってことはないはず。

大体俺達は、令月も含め。

あの日、『玉響』が殺されるまで。

心に仮面を被ることで、ナジュの読心魔法をやり過ごせるだなんて、知らなかったのだ。

ナジュでさえ知らなかった。

そんな貴重な情報を、知っているのは誰か。

『カタストロフィ』で、一時の間協力関係にあった、ヴァルシーナのみ。

ヴァルシーナだけが、知っていた。

恐らくは、『カタストロフィ』にいたときから。

心に仮面を被ることで、ナジュに本心を読まれずに済むと…。

「…そうだと思いますよ。『カタストロフィ』にいたときから、ヴァルシーナは僕に本心を明かしていなかった」

俺の心を読んで、ナジュが不快そうに言った。

ナジュにしてみれば、みすみす騙されていたも同然だ。

そりゃ不快にもなるだろう。

「何となく違和感は感じていたんですけどね。でも、あのときは自分の読心魔法を過信してましたから…」

「…それは、もう気にするなよ」

仕方ないじゃないか。

誰の、どんな魔法にだって、欠点はある。

それに、ナジュはあくまで、『カタストロフィ』に協力していただけで、ヴァルシーナの仲間ではなかった。

必要以上の情報なんて、知る必要もなかったはずだ。

「…まぁ、あのときの僕は…。生きるつもりなんてなかった。自分の死に場所を探すことしか、考えてませんでしたから。ヴァルシーナの本心なんて…読めてたところで、きっとどうでも良かったでしょう」

「…ナジュ…」

「…こんなことになるなら…。ヴァルシーナが『アメノミコト』について、僕達の敵になること分かっていたら。もっと出来ることがあったはず…」

…この、馬鹿。

また自分を責めやがって。

叱り飛ばしてやろうとしたら、俺が言う前に。

「…何でもかんでも、自分のせいにしないと気が済まないんですかね、あなたは」

イレースだった。

イレースが、ナジュを睨んで言った。

半分は怒り。半分は呆れだった。