神殺しのクロノスタシス3

「はぁ〜…。ようやく自由に喋れますよ、もー。拷問ですよ拷問。だーから鬼教官とか呼ばれるんですよ。そんなんじゃ一生、僕みたいなイケメンカリスマ教師にはなれな、」

「もう一度縫い合わせて欲しいですか?」

「さーて、じゃあヴァルシーナの話をしましょうかー」

…誤魔化しやがった。

「皆さんさっきから、『アメノミコト』のことばっかり気にして。いやまぁ、それも大事なことではあるんですけども。それより僕は、ヴァルシーナの方が心配なんですよねぇ」

「…ヴァルシーナかー。確かに面倒な相手みたいだよね」

と、すぐりが相槌を打った。

…何故すぐりが?

「すぐり、お前ヴァルシーナのこと知ってるのか?」

ヴァルシーナ率いる『カタストロフィ』との一件は、令月がイーニシュフェルト魔導学院に来る前のことだ。

だから、令月とすぐりはヴァルシーナのことを知らないはず。

実際、令月は、よく分かんないみたいな、ぼんやりした顔してるし…。

まぁ…基本戦闘時以外は、ぼんやりしてる奴ではあるが…。

「直接会ったことはない。でも、間接的に指南を受けたことはあるね」

「何だって?」

いつの間に、すぐりとヴァルシーナの間に接点が…。

「まぁ、大体想像はつきます」

と、ナジュ。

「あの女のこと、『カタストロフィ』が崩壊した後も、僕達のことはしぶとく探っていたはずです」

…嫌な気分だな。

つまり、ヴァルシーナに観察されてたってことか。

あいつら、今何やってんだろうって?

やめてくれよ。

「まぁ、あの女の執念深さと来たら、ストーカー並みですからねー」

笑いながら言うな。

笑い事じゃねぇんだよ。

「で、勿論あの後、我々と『アメノミコト』が対立したことも掴んでいるでしょう。あとは簡単ですよね。敵の敵は味方」

「…」

だから、国境を越えてジャマ王国に向かい。

わざわざ、『アメノミコト』に…。

「すぐりさんがヴァルシーナを知ってるのも、そういう理由でしょう?恐らく、令月さんが裏切って学院についたときから、ヴァルシーナは『アメノミコト』に接触している」

「だろーね。俺も詳しい時期は知らないけど」

「…ですが」

イレースが、挙手して口を挟んだ。

「何です?」

「『自分はシルナ・エインリーの敵だ、利害は一致しているから手を組もう』と言われて、『アメノミコト』がそう簡単に信用しますか?」

…言われてみれば。

暗殺専門組織ともなれば、敵は勿論、味方でさえ疑うのは日常茶飯事のはず。

いきなり異国の女が訪ねてきて、「自分と手を組もう」と言って、信用するか?

『アメノミコト』が。

あの鬼頭夜陰が。

「そこは僕も気になってました。でも、すぐりさんに会って分かりましたよ」

「…何を?」

「ヴァルシーナは、自分の持ってる知識と技術を、『アメノミコト』に売り込むことで、鬼頭の信用を得たんでしょう。具体的には…僕の読心魔法を無効化する方法、とか」

「…!」

…そうか。

その情報は…確かに、『アメノミコト』にとっては、随分有益だろうな。