神殺しのクロノスタシス3

…すぐりが、元気を取り戻したところで。

「…それで、皆。今後のことだけと…」

…そう。

あの挑戦状の一件は、とりあえず片付いたが。

勝ち星をあげたとはいえ、俺達は所詮、鬼頭にとっての捨て駒と、鬼頭の影武者を倒しただけ。

『アメノミコト』との因縁は、まだ続いている。

ジャマ王国の『アメノミコト』本部には、今でもあの糞ジジィが、ふんぞり返って座っているのだ。

あいつを、どうにかしないことには。

踏んづけても踏んづけても現れる。まるでゴキブリだな。

「鬼頭夜陰は、きっとまた私達に挑んでくる。…だよね?令月君、すぐり君」

「うん」

「だろーね」

二人共、揃って肯定。

俺もそう思う。

『アメノミコト』は、今のところ俺達に2連敗している。

あの、プライドの塊みたいな組織が。

二度も屈辱を味わわされた相手に、すごすご引き下がるとは思えない。

必ず、雪辱を晴らす為に、またやってくる。

諦めが悪いと言うか、陰湿と言うか…。

いい加減諦めてくれよ。

これ以上、刺客を差し向けられるのは御免だ。

俺達に、平穏の二文字をくれ。

イーニシュフェルト魔導学院にいる限り、平穏なんて有り得ないのかもしれないけど。

すると。

「『アメノミコト』は裏切り者を許さない。だから、いずれきっと、また僕達の首を狙ってくる…。…でも」

…でも?

「今すぐのことにはならないよ、きっと。たちまちの間は大丈夫だと思う」

「…何だって?」

俺はてっきり、翌週か、来月にでもまた、挑戦状叩きつけてくるなり。

宣戦布告とばかりに攻め入ってくるのではないかと、警戒しているのだが…。

令月の意見は違う、と?

「すぐりは?すぐりも同意見か?」

「『八千代』と同意見なのは不本意だけど…。俺もそう思うかな」

すぐりも。

元『アメノミコト』の構成員が、揃って同じ意見…。

「それは…また、どうして?」

と、尋ねるシルナ。

「さっきも言ったでしょ?下っ端構成員なら腐るほどいるけど、『終日組』の暗殺者は、そう多くない」

すぐりが答えた。

あぁ、確かに言ってたな。

「そして、下っ端共じゃ、俺達相手に手も足も出ないことは証明済み。それに今回…捨て駒役とはいえ、まがりなりにも『終日組』の暗殺者を何人も差し向けたのに、何の成果もあげられなかった」

「…」

「これがどういうことか分かる?」

…そうか。

つまり、かの名だたる暗殺専門組織『アメノミコト』も…。

「…現状俺達を攻めるには、戦力不足?」

「せーかい」

成程ね。

「正確に『終日組』が何人いるのかは知らないけど、その全員をルーデュニアに差し向けるにはいかない。国内にも、一定数の戦力は常に必要なんだから」

と、補足する令月。

それはそうだ。

たった二人の裏切り者と、それを守る学院相手に(しかも異国の)。

貴重な『終日組』の戦力を、全て投入する訳にはいかない。

「現状、『アメノミコト』の戦力はかなり削がれてると思って良い…と、思う。だから、しばらくの間は大人しいんじゃないかな」

「そうか…」

その点では、少し安心したが…。

「…とはいえ、油断は出来ません。あくまで停戦状態にあるというだけで、いつまた奇襲を仕掛けてくるかは分かりませんよ」

釘を刺すことを忘れないイレースである。

その通りだな。

隠れてコソコソ懐に入り込み、一気に奇襲…なんてのは。

『アメノミコト』の、最も得意とするところだ。

油断は出来ない。

気を抜いていると、いつ背中を撃たれるか。

「勿論、警戒は緩めないよ。そこは、聖魔騎士団…シュニィちゃんやアトラス君とも、連携を取っておく」

だな。

聖魔騎士団との共同戦線を張れば、戦力としては申し分ない。

彼らには彼らの職務があるだろうに、『アメノミコト』とのいざこざにまで巻き込ませて、本当に申し訳ない。

シュニィ達の心の広さに、救われている毎日だ。