神殺しのクロノスタシス3

「令月君も言ってたでしょ。君には才能がある。私もイーニシュフェルト魔導学院の学院長として、今まで色んな生徒を見てきた。その中でも、君の才能は突出してる」

「…」

「令月君にも才能はある。でもすぐり君、君にも負けないくらいの才能がある。才能があるってことは、君には可能性があるってことだ」

「…可能性…」

…そう、可能性。

将来性と言っても良い。

育てれば育てるほど。磨けば磨くほど光る、ダイヤの原石のように。

「君の戦い方は、あの戦場で見せてもらった。羽久にも聞いた。君の魔法は、令月君とはまた違う、別の種類の才能を感じたよ」

同感だ。

そもそも、力魔法しか使えない、偏った令月の才能と。

通常の魔導適性のある、つまり色々な魔法が使えるすぐりの才能を、同列に語るのは間違ってる。

それぞれに、それぞれの長所と持ち味があるのだ。

「君の魔法は、凄く繊細で、研ぎ澄まされてる。しかも、いくらでも応用が効く。私にとって君は、可能性の塊みたいな生徒だよ」

確かに。

あの糸の魔法。使い道は色々ある。

伸ばすも縮めるも、強度も自由自在のあの糸。

他の様々な魔法を組み合わせれば…。

炎の糸、氷の糸、雷の糸など、多種多様な魔法に变化する。

糸の長さは自分で決められるのだから、近距離でも遠距離でも対応可能。

それに、あの尖端の尖った、二本の黒いワイヤー。

あれは確かに物騒だが、使いようによっては、人を殺す以外のことも出来るはずだ。

しかも、忘れてはいけない。

すぐりは、これらの魔法を、僅か13歳で、ほぼ独学で生み出したのだ。

ジャマ王国の魔導化学は、ルーデュニア聖王国ほど進んではいない。

それなのにすぐりは、この特殊な魔法を自分で編み出し、ここまでの精度に練り上げた。

常人に出来ることではない。

そんなすぐりが、魔導化学に優れたルーデュニアに。

しかも、そのルーデュニアの中でも、最も進んだ魔導師養成校である、イーニシュフェルト魔導学院の生徒になった。

独学で、あれだけの高精度な魔法を作り上げたすぐりが。

ルーデュニア1の魔導師養成校に入学したのだ。

恐ろしいことになると思わないか?

こんな才能の塊が、ここで勉強し、研鑽を積み、卒業したら。

きっと、素晴らしい魔導師になれる。

「君がここを卒業するとき、君はもう役立たずなんて呼ばれない。誰からも認められ、尊敬され、称賛され、頼られる人間になる。私がそうさせる。私達が」

私達。

俺やイレースやナジュ、そして天音が。

俺達教師陣が、必ずすぐりを…そして、令月を。

「君を、君達を、必ず立派な魔導師に育て上げてみせる。すぐり君、そのとき鬼頭夜陰は知るだろう。君のような才能の塊を、役立たずだなんて馬鹿にしていた自分が、いかに愚かだったかを」

「…学院長…」

「君は必ず、誰かの役に立つ存在になる。誰にも役立たずだなんて言わせない」

…まぁ。

本人が自分を卑下しているだけで、今でも充分役に立ってる、どころか大いに助けられてるんだけどな。

「絶対そうなるから。信じて。私達のこと、そして自分のことを信じて。令月君や、他の誰かと比べる必要なんてない。君は、君にしかない強さを持ってるんだから」

…今まで、すぐりは。

ずっと、令月を目の敵にして、令月を越える為に研鑽を積んできた。

だが、そんなことをする必要はない。

令月だけにこだわらず、学友達と共に研鑽すれば良い。

すぐりは、すぐりだけの強さを持てば良い。

「自分に価値がないなんて思わないで。君は生きなきゃいけない。生きて、自分の強さを、自分の生まれてきた意味を証明するんだ。…『玉響』君の為にも」

「…!」

『玉響』。

他でもない、すぐりが殺したかつての仲間。

その名前を聞いて、すぐりは唇を噛み締めた。