神殺しのクロノスタシス3

「あの場で頭領様に言われたことは、全部事実だし…」

「すぐり、そんなことないだろ」

「いーんだってば。認めたくなかっただけで、本当は心の底では分かってた。俺がいくら努力して頑張ったって、頭領様が期待してたのは『八千代』だけだった。俺は所詮、使い捨ての、役立たずの道具でしかなかった」

「すぐり」

そうじゃないだろ。

「あんな奴の言うこと、真に受けるな。あれは影武者だったんだ」

「でも、中身は頭領様だったよ。分かってるでしょ」
 
「…」

…それは。

「おまけに、『薄暮』に、体内にあんな仕掛けを仕込まれてたことも知らなかった。完全に使い捨てだったんだ、俺。そんなことも知らなくて、戦力になるどころか、皆を危険に晒して、ナジュせんせーまで死ぬほど苦しめちゃった」

自嘲して笑いながら言うすぐりに。

ナジュが、さらさらと何かを書き始めた。

きっと、すぐりを慰める言葉を…。

『全くですよ。超苦しかったんですからねあれ。』

この馬鹿ナジュ。

こんな傷心のすぐりを、更に追い詰めてどうする。

「…だよね。何て言うか…。…ごめん」

案の定、めっちゃ落ち込んじゃってる。

「そ、そ、そんなことないよすぐり君!確かにあれはびっくりしたけど、当たったら私達即死並みだったけど、でもほら、君のせいじゃないでしょ?すぐり君だって知らなかったんだから、ね?」

あわあわと、必死に慰めようとするシルナだったが。

むしろ追い詰めてる感。

ますます、落ち込むすぐり。

しかし。

令月は、落ち込んだすぐりに、あっけらかんとして言った。

「今更そんなこと、気にしなくて良いよ。それが頭領のやり口でしょ」

「…『八千代』…」

「『八千歳』だって、身体にあんな仕掛けが施されてること、知ってて黙ってた訳じゃないんでしょ?」

「…当たり前でしょ」

自覚があるんだったら、ナジュの読心魔法で、とっくにバレてただろうからな。

本人に自覚がないことは、ナジュの読心魔法でも読めない。

だって、知らないんだから。

自分でも知らないことを、どうして他人が知ることが出来ようか。

だから。

「あれはお前のせいじゃない。もう気にするな」

「…」

隣で、またナジュが何か書いてる。

またすぐりに、追い打ちするようなことを書いたなら。

本格的に、ファラリスの雄牛に登場してもらおう。

と、思ったが。

『死ぬほど苦しかったですけど、でも僕、死ぬほど痛いのも苦しいのも慣れてますから。僕も伊達に不死身やってないんで、そんなことくらいで落ち込まないでください。』

「ナジュせんせー…」

…良かった。

ファラリスは回避だな。

それから。

「…で?誰が戦力にならなかったって?」

こっちにも、異義を唱えさせてもらうぞ。

「戦力…なってなかったじゃん、俺」

「あ?あの面倒臭い水色を始末出来たのは、誰の作戦のお陰だっけ?」

忘れたとは言わせないぞ。

己の戦果くらい、ちゃんと覚えておけ。