神殺しのクロノスタシス3

…揃った、とシルナは言ったが。

「天音は?来てないじゃん」

「あー、呼ぼうと思ったんだけど、五年生の子が、軽い熱中症で保健室に来たらしくて」

何だと?
 
「大丈夫なのか?それ」

「意識ははっきりしてるし、水分補給させて氷嚢当てて、しばらく保健室で休ませれば問題ないだろうって」

「それで、天音が傍についてるのか」

「うん。今のところ症状は軽いけど、万が一何かあったら大変だからね」

全くだ。
 
そうか熱中症か。もうそんな時期になったな。

気をつけてないと、魔導師でも病気にはなるからな。普通に。

校内はエアコン完備だが、だからといって油断は出来ない。

成程、それじゃあ、天音は話し合いには参加出来ないな。

彼には、生徒の看病についていてもらわなければ。

仕方ない。

「じゃ、後で今日の報告をまとめて、天音さんに渡しておきます」

相変わらず、有能なイレースである。

それに比べて、どっかの不死身野郎と来たら…。

「むむむ。むむーむー?むーむーむー」

何言ってるのか知らないが、多分俺の心を読んで、抗議してるんだろう。

知るか。

「むむむーむー。むーむー?」

「悪いが俺、お前の母国語知らん」

「むー!」

怒っても知らん。

「むむむ…。むー」

ナジュは何かをメモに書き、渡してきた。

『話し合いするのに、僕が喋れなかったら参加出来ないじゃないですか。』とのこと。

成程、会議を口実に、口に縫い付けられた糸をほどけ、と。

確かに、喋れなかったら不便だよな。

しかし。

「イレース。どうする?」

「却下」

「むー!」

残念だったな。

元ラミッドフルスの鬼教官に、慈悲の二文字はない。

ファラリスを回避しただけで、イレースにとっては百歩どころか、百万歩くらい譲ったつもりなんだろうからな。

「喋りたきゃ、これでも使いなさい」

イレースは、持ち運び出来る小さめのホワイトボードと、黒いマーカーを放った。

「むむ〜…」

不満そうなナジュだが、イレースはふんっ、と鼻を鳴らすだけ。

諦めて、自分の罪を反省するんだな。

シルナは、「あぁ可哀想に…」みたいな顔をしていたが。

放っとけ。あれは自業自得で、当然の罰だ。

確かに、俺達を助けてくれたことは感謝してる。

いつもいつも盾になってくれて、頭が上がらない。

だが。

それはそれ。これはこれ。

無闇に盾になるなって言ってるよな?

反抗期の生徒でも、もっと素直に言うこと聞くわ。

反抗期だお前は。

すると。

ナジュが早速、ホワイトボードに何かを書いていた。

何だ。早速言いたいことがあるのか。

で、見せてきたホワイトボードには。

『僕、生まれたときから反抗期なんで(・ω<)☆』

やっぱりファラリス持ってこようぜ。

イレースがいつも、シルナの自堕落ぶりに腹を立ててるとき。

こんな気持ちなのかなぁと思うと、激しくイレースに同情した。