避けきれなかった。
自分の髪の毛が、スライサーで切られたようにパラパラと地面に落ちた。
…危なかった。
あと一瞬でも遅れていたら、髪の毛どころではなく、首ごと一刀両断されていた。
「あはは!今のを避けるとは。さすがにそこまで耄碌した訳じゃないんだ。安心したよ」
「『八千歳』…」
「気安く呼ばないでくれるかなぁ?この裏切り者が」
「…っ…」
言い返す言葉がない。
僕が裏切り者なのは、言うまでもなく事実であって…。
「でも俺は嬉しい。分かってると思うけど、俺は頭領様から直々に勅命を受けた」
「勅命…?」
「君を殺せってね」
…そうだろう。
だから、他ならぬ君がここに来たんだろう。
「裏切ってくれてありがとう、『八千代』。これでようやく俺は、合法的に君を殺せる。凄く嬉しい。俺はずっと君を、殺したくて殺したくて堪らなかったんだ」
…知ってる。
「俺が君を殺せば、俺はようやく頭領様に認められる。あの『八千代』より上だってことが証明される。俺が一番の…頭領様のお気に入りになれる」
「…」
「だから死んでもらうよ、『八千代』。裏切り者には、相応の死を…」
「…あの手紙」
「…は?」
『八千歳』が僕を殺したいのは知ってる。
昔からそうだった。君は僕を殺したがってたから。
でも、そんなことはどうでも良い。
「あの手紙に書いていたことは…何?」
「手紙…?あぁ、名前のこと?君の名前。黒月令月だっけ?そんな名前だったんだね、知らなかった。頭領様が教えてくれたよ」
そうだね。『アメノミコト』は秘密主義。
仲間内でも、個人の名前さえ教えられない。
でも、僕が言いたいのは、名前のことなんかじゃない。
「ルームメイトを殺すって…」
「…あぁ。そんなこと気にしてたの?」
『八千歳』は、口許を歪めるようにして笑った。
そう。あの封筒の中身。
そこには、メモ用紙が入っていた。
『アメノミコト』で、内密に任務を受けるときに使われるメモ用紙。
そして、そこに書かれていたのは、今日、今、この時間の日時と場所。
それから、もう一文。
「従わなければ、ルームメイトを殺す。他言無用」と。
だから僕はここに来た。
一人で。
誰かに話せば、ユイト君が殺されると思って。
「一人じゃないんでしょう?『八千歳』…」
僕が逆らえば。僕がこの時間、ここに来なかったら。
有言実行、即座にルームメイトを殺せるように、もう一人…刺客を待機させてるはずだ。
「正解。もう一人来てるよ。誰か…は教えてあげても良いけど、どうせ君は知らないよ。俺だって今回の任務で組むのが初めてなんだし」
「…」
やはり、そうか。
刺客は二人…。あるいは、三人以上…。
「大丈夫だよ。今回の任務で派遣されたのは、俺とそのもう一人だけ。二人だけだよ」
…二人だけ。
『八千歳』と、それからもう一人。
誰かは知らないけど、間違いなくそのもう一人も、『終日組』だ。
「…ねぇ、『八千代』。一つ提案があるんだけど」
「…提案?」
「俺と一騎討ちをしよう」
「…!」
一騎討ち…だって?
自分の髪の毛が、スライサーで切られたようにパラパラと地面に落ちた。
…危なかった。
あと一瞬でも遅れていたら、髪の毛どころではなく、首ごと一刀両断されていた。
「あはは!今のを避けるとは。さすがにそこまで耄碌した訳じゃないんだ。安心したよ」
「『八千歳』…」
「気安く呼ばないでくれるかなぁ?この裏切り者が」
「…っ…」
言い返す言葉がない。
僕が裏切り者なのは、言うまでもなく事実であって…。
「でも俺は嬉しい。分かってると思うけど、俺は頭領様から直々に勅命を受けた」
「勅命…?」
「君を殺せってね」
…そうだろう。
だから、他ならぬ君がここに来たんだろう。
「裏切ってくれてありがとう、『八千代』。これでようやく俺は、合法的に君を殺せる。凄く嬉しい。俺はずっと君を、殺したくて殺したくて堪らなかったんだ」
…知ってる。
「俺が君を殺せば、俺はようやく頭領様に認められる。あの『八千代』より上だってことが証明される。俺が一番の…頭領様のお気に入りになれる」
「…」
「だから死んでもらうよ、『八千代』。裏切り者には、相応の死を…」
「…あの手紙」
「…は?」
『八千歳』が僕を殺したいのは知ってる。
昔からそうだった。君は僕を殺したがってたから。
でも、そんなことはどうでも良い。
「あの手紙に書いていたことは…何?」
「手紙…?あぁ、名前のこと?君の名前。黒月令月だっけ?そんな名前だったんだね、知らなかった。頭領様が教えてくれたよ」
そうだね。『アメノミコト』は秘密主義。
仲間内でも、個人の名前さえ教えられない。
でも、僕が言いたいのは、名前のことなんかじゃない。
「ルームメイトを殺すって…」
「…あぁ。そんなこと気にしてたの?」
『八千歳』は、口許を歪めるようにして笑った。
そう。あの封筒の中身。
そこには、メモ用紙が入っていた。
『アメノミコト』で、内密に任務を受けるときに使われるメモ用紙。
そして、そこに書かれていたのは、今日、今、この時間の日時と場所。
それから、もう一文。
「従わなければ、ルームメイトを殺す。他言無用」と。
だから僕はここに来た。
一人で。
誰かに話せば、ユイト君が殺されると思って。
「一人じゃないんでしょう?『八千歳』…」
僕が逆らえば。僕がこの時間、ここに来なかったら。
有言実行、即座にルームメイトを殺せるように、もう一人…刺客を待機させてるはずだ。
「正解。もう一人来てるよ。誰か…は教えてあげても良いけど、どうせ君は知らないよ。俺だって今回の任務で組むのが初めてなんだし」
「…」
やはり、そうか。
刺客は二人…。あるいは、三人以上…。
「大丈夫だよ。今回の任務で派遣されたのは、俺とそのもう一人だけ。二人だけだよ」
…二人だけ。
『八千歳』と、それからもう一人。
誰かは知らないけど、間違いなくそのもう一人も、『終日組』だ。
「…ねぇ、『八千代』。一つ提案があるんだけど」
「…提案?」
「俺と一騎討ちをしよう」
「…!」
一騎討ち…だって?


