神殺しのクロノスタシス3

自分が負けるかもしれないってことを、少しも自覚してない顔。

良いだろう。

なら、その伸びに伸びきった出鼻、盛大にへし折ってやる。

蛍光塗料をつけられたレインボー集団は、残り少ない。

一人ずつ片付けて、誰一人守ってくれる仲間がいなくなれば。

その愉悦に満ちた顔も、少しは歪むだろう。

「ナジュ!プランBだ!」

「…」

ナジュは毒のせいで無言だったが、指でOKマークを作った。

よし。

残りの色は、水色、黄緑、白、朱色。この四人。

随分と、カラーラインナップも少なくなってきたじゃないか。

「ナジュ!水色!」

「…」

俺が叫ぶと、ナジュは、両手をしゅばしゅばしゅば、と高速で、複雑な形で動かした。

成程、水色は手裏剣使いらしい。

おまけに、令月と同じくスビード特化型。

さすが『アメノミコト』。忍者だな。

「ナジュさん。黄緑は?」

「…」

イレースの問いに、またしても、しゅばしゅばしゅば、とジェスチャーで答えるナジュ。

イレースは、それで分かったというように頷いた。

「不死身先生、あの白…」

「…」

令月が尋ねる前に、ナジュは高速ジェスチャーで応答した。

「分かった」

この、一連のやり取りで。

鬼頭は、苛ついたように眉を吊り上げた。

「貴様ら、小癪な真似を…」

「お前から、そんな言葉が聞けるとは思わなかったよ」

小癪な真似世界代表みたいな奴が。

俺達の作戦を、小癪呼ばわりしないで欲しいね。

俺達が小癪なら、お前らは何だ?

大癪か?え?

「ナジュの口を潰してくることくらい、こっちは対策済みなんだよ」

命を落としてまで、ナジュを黙らせてくれた『薄暮』。

残念だったな、お前は無駄死にだ。

すぐりをめちゃくちゃに操ってくれた、その報いとでも言おうか。

お前らは、毒使いなんだから。

ナジュの読心魔法が厄介と知るや、ナジュ潰しをしてくることは、こちらとしても予測済み。

口を封じられる可能性も、当然考慮していた。

それ故の、ジェスチャー戦法。

要するに、手話みたいなものだな。

本当の手話だったら、向こうの暗殺者に手話を使える奴がいたらバレるので。

俺達だけに通じる、独自の手話を考えた。

そして、あらかじめ、身振り手振りで符丁を伝えられるよう、頭に叩き込んできた。

大変だったんだぞ。何せ、時間がなかったからな。

俺やイレース、令月辺りはすぐに覚えたが。

脳みそが老人のシルナは、覚えるのに時間掛かったもんだ。

何せ、脳みそが老人だからな。

「羽久がまた…私に失礼なことを…」  

じとー、っとこちらを見つめるシルナ。

老人脳みその癖に、そういうところは相変わらず鋭いな。 

「ナジュ君、あの朱色の子は…?」

「…」

しゅばしゅばしゅば、と答えるナジュだが。

「…えーと…最初に右手で次に中指で左手の薬指が上だから…」

やっぱり老人脳みそ。

覚えきれてなかった。

よし、シルナは放っとこう。

俺の相手は、あの手裏剣使いの水色だ。