神殺しのクロノスタシス3

「さぁ、随分人数も減りましたし、あとは残りの始末を、」

「ナジュ!」

『薄暮』だった。

『薄暮』の執念の一撃が、ナジュの目の前に迫った。

咄嗟に仰け反って避け、同時にナジュは、風魔法の刃で『薄暮』の喉元を切り裂いた。

即死だ。

たが、『薄暮』もタダでは死ななかった。

『薄暮』の細いナイフが、彼女の起死回生の一撃が、ナジュの口元を掠めた。

致命傷ではないものの、傷を負わされた。

「いったぁ。全くこの男前の顔に傷をつけるとか、酷いことす、∇∶ερ⊄≪<Ο↻↹$©」

「ナジュ!?」

今、人語喋ってなかったんだけど?

「…」

ナジュの口元を切った傷痕は、早くも塞がり始めていたが。

ナジュは無言で、喉元を押さえ。

じーっと、俺達を見つめた。

アイコンタクトで、何か伝えようとしてくれてるみたいだが…。

大体、察しはつく。

「…毒か?」

「…」

こくこく、と頷くナジュ。

成程。

『薄暮』の奴、最後の最後までやってくれる。

傷口は僅かながら、彼女はナイフに毒を仕込んでいた。

彼女はナジュと差し違えて、ナジュの読心魔法を無効化したのだ。

具体的に言うと、作戦その2を潰してきやがった。

心を読み、その情報を口頭で俺達に伝えることで、敵の動きを先読みして戦うのが、作戦その2だった。

だが、『薄暮』は毒によって、ナジュの口を塞いだ。

喋れなくしてしまえば、いくら心を読もうとも、味方に伝えることは出来ないと踏んだのだ。

その為だけに。ナジュの読心魔法を封じる為だけに、命を投げ出してまで…。

「ほう、成程。よくやった『薄暮』」

味方の『終日組』レインボー暗殺者達が、バタバタと倒れていくのを。

黙って高みの見物してただけの糞ジジィが、死んだ『薄暮』にそう言った。

「命を賭して、敵の司令塔を潰してから死んだ。役に立つ死に方だ」

「…」

「何処ぞの…自爆しても、何の役にも立たなかったどころか、敵に寝返った餓鬼とは、大違いだ」

「…おい」

この、糞ジジィ。

「それがもし、すぐりのことを言ってるんなら…今すぐお前を殺すぞ」

「ふん…。やれるものなら、やってみるが良い」

言ったな?

じゃあ、遠慮なくやってやるよ。

「eimt edvanca」

俺は再び、時魔法によって身体を加速させ、一気に、鬼頭との距離を詰め。

そのムカつく頭と、胴体を泣き別れさせてやろうとした。

しかし。

「させないっ!」

「っ!!」

レインボー集団の一人、オレンジが。

鬼頭と俺の間に、身を挺して滑り込んだ。

俺の渾身の氷魔法の刃は、鬼頭の代わりに、オレンジの身体を切り裂いた。

オレンジは、血飛沫を上げて倒れた。

目の前で、自分の部下が、自分を守る為に命を投げ出したというのに。

鬼頭は、オレンジを見下ろすことさえしなかった。

…そうかよ。

お前にとって部下は、仲間は、そういう存在か。

自分に危機があれば、必ず味方が、命を投げ出してでも助けてくれる。

それを確信しているから、いくらでも高みの見物が出来るって訳か。

「…お前は、俺を苛立たせる天才だな」

「…」

この上ない憎悪を込めて、悪態をついたが。

鬼頭夜陰は、蛇のように気色の悪い笑みを浮かべただけだった。