神殺しのクロノスタシス3

俺は、時魔法によって自分の身体を急加速させた。

その最高瞬間速度は、令月をも遥かに上回る。 

常人なら、速過ぎて身体を動かすのも不可能だろうが。

時魔法による超加速は、俺の得意とする戦法だ。

ナジュが読心魔法を得意とし、シルナが分身魔法を得意としているのと同じ。

時魔法において、俺の横に並ぶ者はいない。

…俺の上に立つ者なら、いるけどな。

他でもない、俺の中に。

「…悪いな」

超加速についてこられなかった、暗殺者赤は。

暗器を地面に転がし、自分もまた、暗器と同じく地面に転がっていた。
 
と、同時に。

「ぎゃぁぁぁ!」

「ふぅ…。日頃のストレスが発散されますね」

暗殺者紫が、イレースの雷魔法によって、黒焦げの刑に処されていた。

…こえぇ…。

すると、ナジュが若干引いた様子で、教えてくれた。

「…マジで怖いですね。イレースさん今、その紫のことを学院長に見立てて雷魔法撃ってましたよ」

「えっ」

シルナ、びっくり。

「そうですね。先日の、請求書偽造の件を思い出して。あのときは随分手加減してあげたので、まだ鬱憤が溜まっていたんですよ。ようやく晴らせました」

「…」

シルナ、ガクブル。

…マジかよ。
 
あのときも、シルナは充分散々な目に遭わされていたと思っていたが。

イレース的には、あれでもまだ「随分手加減して」お仕置きしたつもりだったのか。

で、本気は今の、これ。

…危なかったな、シルナ。

イレースが手加減してくれてなかったら、お前、その紫と同じ運命を辿ることになってたぞ。

そして。

「ぐあっ…」

「…」

令月と戦っていた、魔弾使いの暗殺者黄色が。

ついに、令月の小太刀の前にひれ伏した。

…遠距離戦闘特化の暗殺者にしては、令月を相手に、よく粘った方だよ。

見たか。

これぞ作戦その2。

塗料で色分けし、ナジュの読心魔法で敵の動きを随時実況中継してもらう。

当然敵はナジュに心を読まれまいと、必死に心の仮面を被ろうとするが。

すぐりの経験から、あの心に仮面状態は、かなり神経を使わないと出来ない上に、長時間は続けられないと分かっている。

その上で俺達が奇襲を仕掛ければ、気が散って、敵は心を閉ざすことに集中出来なくなる。

そうなれば、心の仮面は剥がされたも同然。

ナジュにしてみれば、心の中覗きたい放題。

おまけにナジュは、あの糞ったれな読心魔法訓練によって、短時間であれば、複数人の同時読心も可能にしている。

心の仮面から漏れ出る彼らの本心を読み取り、俺達に伝えてくれるのだ。

心の中を読まれてるんじゃ、まともに戦うことは出来まい。
 
おまけに、集中しようとしても、不定期にシルナヒアリがチクチク刺してくるんだからな。

余計、集中しづらいだろう。

小癪な、と思ったか?

勝手に思え。

暗殺者集団相手に、誰が正々堂々、真っ向勝負を挑んでやるか。

大体、向こうもそのつもりがないのは明白なのだ。

相手が搦め手を使うなら、こちらも同じことをする。

同じ土俵に上がってやったことを、感謝して欲しいくらいだ。