令月じゃないが。
俺も、窓から飛び降りる特技があればなぁ。
今すぐ、この修羅場から逃げ出すんだが。
イレースは、笑顔だった。
見たことがないくらい…真っ黒な笑顔。
口調は優しいのに、この顔。
人を殺せる顔がこの世にあるとしたら、この顔だろうな。
「認知症の症状として、お金の管理が出来なくなるというものは、珍しくないそうですから。大丈夫です。学院長もボケてしまったんですよね。仕方ないですよね」
「…」
イレース、最高に良い笑顔。
シルナ、顔面蒼白でガクブル。
「学院長はボケてしまったんですね。でなければ有り得ませんよね?…業者に割引してもらった魔導人形の差額分を、菓子代にすり替えるなんて」
「ひっ…!」
…バレてる。
シルナの工作、あっさりバレてる。
「贔屓にしている業者からの請求が、微妙にいつもの額と変わっているから、気になって業者に問い合わせてみたら…。新型の魔導人形を、定価より割安で仕入れさせてもらったそうですね」
…そうか。
業者に直接聞いたのか。
それは…バレるな。
「それじゃあ、この請求書はおかしいですよね?割安で仕入れたはずなのに、定価価格と同等になってる。私、苦労して調べたんですよ?学院に届いている配送伝票を、一枚一枚確認して…」
マジ?
あれ、全部控えてるの?
「そうしたら見つかりましたよ。いつぞや聞いた忌々しい菓子屋の名前…確か、『ヘンゼルとグレーテル』でしたっけ?…とってもメルヘンで、素敵な名前ですね」
素敵ですね、って顔してないよ、君。
今すぐ人を殺しそうな顔だよ。
「で、その菓子屋にも問い合わせたんです。そうしたら見つかりました。注文履歴。確か…アルファフォーレスでしたね?それをダース単位でご注文されたとか」
…終わったな。
全ては暴かれた。
シルナ、やっぱり悪は裁かれる運命なんだよ。
「認知症でもなければ、有り得ませんものね、こんな愚かな真似をするなんて」
「い…い…イレースちゃん…」
「良いんですよ。認知症なら仕方ないです。認知症患者を責めるのは筋違いというもの」
「あ、あの、あのね、イレースちゃん落ち着、」
「そんな訳で私、探しておきましたよ」
「え?」
イレースは、テーブルの上に、数冊のパンフレットを置いた。
…どれも、老人介護施設のパンフレットだった。
「認知症患者を学院に置いておく訳にはいきませんからね。また同じことをされちゃ困りますから。ボケ老人は、ボケ老人の巣に帰ってもらわなければ。さぁ、好きなところを選んでください」
「…ふぇ」
シルナの目に、ぶわっ、と涙が浮かんだ。
請求書偽造の罪は、重かった。
本人や、俺が思ってるよりずっと、重かった。
「い、イレースちゃん、許し…」
「とっとと選べボケ老人」
無慈悲。
「さもなくば…焼け焦げろ」
イレースの杖から、莫大な威力の雷が迸った。
…あぁ。
俺も、窓から飛び降りる特技があればなぁ。
今すぐ、この修羅場から逃げ出すんだが。
イレースは、笑顔だった。
見たことがないくらい…真っ黒な笑顔。
口調は優しいのに、この顔。
人を殺せる顔がこの世にあるとしたら、この顔だろうな。
「認知症の症状として、お金の管理が出来なくなるというものは、珍しくないそうですから。大丈夫です。学院長もボケてしまったんですよね。仕方ないですよね」
「…」
イレース、最高に良い笑顔。
シルナ、顔面蒼白でガクブル。
「学院長はボケてしまったんですね。でなければ有り得ませんよね?…業者に割引してもらった魔導人形の差額分を、菓子代にすり替えるなんて」
「ひっ…!」
…バレてる。
シルナの工作、あっさりバレてる。
「贔屓にしている業者からの請求が、微妙にいつもの額と変わっているから、気になって業者に問い合わせてみたら…。新型の魔導人形を、定価より割安で仕入れさせてもらったそうですね」
…そうか。
業者に直接聞いたのか。
それは…バレるな。
「それじゃあ、この請求書はおかしいですよね?割安で仕入れたはずなのに、定価価格と同等になってる。私、苦労して調べたんですよ?学院に届いている配送伝票を、一枚一枚確認して…」
マジ?
あれ、全部控えてるの?
「そうしたら見つかりましたよ。いつぞや聞いた忌々しい菓子屋の名前…確か、『ヘンゼルとグレーテル』でしたっけ?…とってもメルヘンで、素敵な名前ですね」
素敵ですね、って顔してないよ、君。
今すぐ人を殺しそうな顔だよ。
「で、その菓子屋にも問い合わせたんです。そうしたら見つかりました。注文履歴。確か…アルファフォーレスでしたね?それをダース単位でご注文されたとか」
…終わったな。
全ては暴かれた。
シルナ、やっぱり悪は裁かれる運命なんだよ。
「認知症でもなければ、有り得ませんものね、こんな愚かな真似をするなんて」
「い…い…イレースちゃん…」
「良いんですよ。認知症なら仕方ないです。認知症患者を責めるのは筋違いというもの」
「あ、あの、あのね、イレースちゃん落ち着、」
「そんな訳で私、探しておきましたよ」
「え?」
イレースは、テーブルの上に、数冊のパンフレットを置いた。
…どれも、老人介護施設のパンフレットだった。
「認知症患者を学院に置いておく訳にはいきませんからね。また同じことをされちゃ困りますから。ボケ老人は、ボケ老人の巣に帰ってもらわなければ。さぁ、好きなところを選んでください」
「…ふぇ」
シルナの目に、ぶわっ、と涙が浮かんだ。
請求書偽造の罪は、重かった。
本人や、俺が思ってるよりずっと、重かった。
「い、イレースちゃん、許し…」
「とっとと選べボケ老人」
無慈悲。
「さもなくば…焼け焦げろ」
イレースの杖から、莫大な威力の雷が迸った。
…あぁ。


