神殺しのクロノスタシス3

「無理して思い出すことない。記憶があろうとなかろうと、君はナジュ君で、それ以外の何者でもない」

「…学院長…」

「そりゃ、思い出してくれるのが一番だけど。それでまた無理して倒れたんじゃ、同じことの繰り返しだもん」

それはやめてくれ。

縁起でもないことを言うな。
 
悪夢再来かよ。

「忘れたんなら、また築いていけば良い。一度仲良くなれたんだから、また仲良くなれるよ。1から、また仲良くなろう。思い出を築いていこう」

…そうだな。

そりゃあ、ナジュの記憶が戻るなら、その方が良いけど。

でも思い出せないからって、ナジュが自分を責める必要は、全くない。

ましてや、今度はなくした記憶を取り戻そうと無理をして、またぶっ倒れられたら。

今度こそ俺達も、心折れるぞ。

それだったら、忘れてくれて良い。

楽しい思い出は、たくさんあったが。

ナジュにとって辛い記憶も、たくさんあったはずだから。

それを忘れられるなら、ナジュにとっては良いのかもしれない。

思い出せば、辛かったときのことも、一緒に思い出す訳だからな。

だったら、どちらでも良い。

「思い出せるようになったら、思い出せば良い。出来ないならそれでも構わない。また一緒に、今までよりたくさん、楽しい思い出を作っていこうよ」

「…!」

それで、良いじゃないか。

折角、目を覚ましてくれたんだから。

それ以上を望むのは、贅沢というものだ。 

「ま、俺は元々、まだ付き合い短いからね〜。今から初対面でも全然OKだよ」

非常に軽いノリのすぐり。

と、

「僕、不死身先生が不死身だって知らないで、腕切断させたことあるからなー。それを忘れてくれるんなら良いかも」

こちらも割と軽いノリの令月。

あのな、それ言っちゃったら意味ないだろ。

「そうですね。今度はもっと授業に熱心に取り組むよう、再教育する良い機会です」

イレースなんて、考え方が前向き。

頭の切り替えの速さは、相変わらず一流だ。

そして。

「俺も、シルナと同意見だ」

俺は、ナジュにそう言った。

思い出せないのなら、無理をして思い出すことはない。

また1から、やり直しても構わない。

ここに、イーニシュフェルト魔導学院に、戻ってきてくれたんだからそれで充分だ。

「また一緒に、なくした分以上の思い出を作っていけば良い。だろ?」

「…皆さん…」

…だからそんな、泣きそうな顔すんなって。

お前が何回忘れても、その度にまた、1からやり直せば良いだけの話だ。

だからもう、無理はするな。

「…ありがとう、ございます」

ここから俺達の絆の、再スタートだ。