神殺しのクロノスタシス3

「…それで?俺達のことは話さないつもり?」

「それは…」

「まー『八千代』の件はどうでも良いけどさー、俺の話はした方が良いんじゃない?ナジュせんせーが今の状態になったのは、俺に原因の一端がある訳で」

「…!」

ナジュが、ハッとしてすぐりを見た。

「あなた…も、僕のこと知ってるんですか?」
 
「まぁね〜。何なら君より俺の方が、君のことよく知ってると言っても過言ではない」

嘘つけ。過言だそれは。

とはいえ。

すぐりが、ナジュの記憶喪失の件に関わっているのは、紛れもない事実。

すぐりだけではない。

すぐりの話をする為には、先に令月の話をしなければならない。

ナジュがイーニシュフェルト魔導学院に来てから起きた、大きな事件。
 
『アメノミコト』…そして、令月を巡るあの一件について。

そこから順を追って話さなければ。

「…あんまり気持ちの良い話じゃないから、気が進まないんだけどね」

「さっきまでの話も、充分シリアス展開だったけどね」

そうだけど。

さっきまでの話は、登場人物は皆大人だ。

しかし、令月とすぐりは子供だ。

本人達は、全く自覚していないようだが。

その歳で、生きるか死ぬかの話を、平気な顔してするもんじゃない。

とはいえ、その話をしなければ、ナジュの記憶が取り戻せないのなら…。

…仕方ない、か。

ナジュも事件に巻き込まれた、当事者の一人だったんだもんな。

記憶を取り戻すのに、避けては通れまい。

特に、読心魔法暴走の原因に繋がった、すぐりの事件については。
 
分かったよ。

話せば良いんだろ、話せば。
 
…が、その前に。

「…分かった。令月の件から話し始めるから、お前らは帰れ」

「え、何で?」

何でじゃねぇ。

「子供のする話じゃない。大体、子供はもう寝る時間だ」

夜間外出禁止って、何回言ったら分かるんだ?こいつらは。

それともこの二人、シルナヤママユガと同じで、夜行性か?

しかし。

「子供の話じゃない。僕の話だよ」

「…」

「僕の話を、僕の口から話さないで、何が伝わるの?」

…真顔で、正論言いやがる。

「あのなぁ、令月…」

「大人だ子供だって、それは大人の理論であって、子供にも子供の理論があるんだけどね〜。そこを理解しないのが大人だよねー」

悪かったな。
 
子供だって、大人の理論を理解しないだろうが。

「確かに僕らは子供だけど。でも、自分の身に何が起きたのかくらい、自分で分かってる。自分の口から話せる」

「…」

「こういう言い方はしたくないけど…。僕らが歩んできた人生に、他人が口を挟まないで」

…相変わらず。

二人共、子供らしからぬ…肝の座った目をしていた。

…あぁ、そうかい。

全く、子供らしくなくて…可愛くない奴らだよ。

「…シルナ」

「うーん…。仕方ないねぇ」

シルナも、苦い顔で頷いた。

駄目だ帰れ、って言っても聞かないだろうし。  

監視つけてても潜り抜けるし。

何なら、縛り付けてても脱走しそうな勢いだし。

…そして何より、令月の言う通り。

令月の話は、令月のものだ。

すぐりの話もまた、すぐりのもの。

俺達他人が…口を挟んで良いことじゃない。

「じゃ、僕から始めるね」

令月は、自らの過去について話し始めた。