神殺しのクロノスタシス3

俺達は、時間をかけてナジュに話をした。

彼の知らない、彼の過去の物語を。

俺達とナジュの出会いは、去年の春。

だが、それは直接出会ったのがその時期だったというだけで。

もっと遠回しな形で、彼と関係していたのだ。

という事実を知ったのは、俺達もナジュが正体を現してからのことだったのだが。

そして、ナジュの過去について語るには、どうしても不可欠な存在がいる。

記憶を失っても、彼女のことだけは覚えていると言う。

『冥界の女王』と呼ばれる魔物、リリスの存在だ。

幸いナジュは、リリスとの出会い、そして別れの時の記憶は覚えていた。

忘れているのは、その後だ。

成程。

ナジュにとって、辛く苦しい日々のことが、すっぽり抜け落ちている訳だ。

もしかしたら、ナジュにとっては、思い出さない方が良い記憶なのかもしれない。

何故ならナジュは、リリスと別れ…いや、融合して、自分の身が不死身になってから。

段々と、狂ってしまったのだから。

そして、俺達は話した。

ナジュと融合したことによって、リリスと現実世界で会えなくなり。

今みたいに、精神世界を行き来する手段を知らなかった当時のナジュは。

リリスとの再会を果たす為、手段を選ばなくなっていった。

やがてナジュは、『カタストロフィ』という組織のリーダー、ヴァルシーナと手を組むことに決めた。

ヴァルシーナについて説明していたら、それこそ夜が明けるのだが…。

そこは上手く割愛して、とにかくナジュは、その『カタストロフィ』と手を組み。

『禁忌の黒魔導書』と呼ばれる、国が指定する危険な魔導書の封印を解いた。

その目的は、ルーデュニア聖王国を混乱に陥れ、聖なる神を復活させ、今度こそ邪神を滅ぼす為…。

…というのは、あくまで『カタストロフィ』の目的。

ナジュの目的は、その神々の大戦争に巻き込まれ、不死身の自分を殺してもらうこと。

全ては、自分の死に場所を見つける為。

その為に、『カタストロフィ』と手を組み、『禁忌の黒魔導書』の封印を解き。

それに失敗した後は、イーニシュフェルト魔導学院に生徒として潜入し。

内側から、俺達を貶めようとしたが。

まぁそれは失敗して。

結局、シルナの手によって、精神世界を通してリリスとの再会を果たし。

それ以降は、『カタストロフィ』とも離れ、イーニシュフェルトに…俺達の仲間になった。

その際シルナが、「禁書の封印を解いた犯人(=ナジュ)を監視する為」という、片腹痛い名目のもと。

ナジュをイーニシュフェルト魔導学院に連れてきて、それ以来ここで教師として過ごしてきた。

…以上が。

ナジュに語った、彼の過去である。