神殺しのクロノスタシス3

…ナジュを見舞った後。

俺とシルナが、学院長室に戻ろうとすると。

「…ん?」

学院長室の前で、男子生徒が二人ほど、うろうろしていた。

「あれ、君達どうしたの?私に何か用だった?」

「あ、学院長先生…。グラスフィア先生
も」

しまったな。

俺達に何か用事があって、訪ねてきてたのか。

それは済まないことをした。

「ごめんね、待たせちゃって。どうかしたの?」

「あの、これ…。ナジュ先生に…」

二人は、大きな青い花束を差し出した。

何処からこんな花束を、と思ってよく見てみると。
 
その花束は、本物の花ではなく、紙で出来ていた。

青い折り紙で折った、薔薇の花束。

「これは…?」

「あの、俺達、風魔法サークルのメンバーで」

そう言われて、思い出した。

そうだ、この生徒、二人共風魔法サークルのメンバーだ。

「ナジュ先生、倒れる少し前の何週間か、サークルに通ってくれて…。俺達に色々教えてくれて…」

「…」

「それなのに、今、その…こんなことになって、せめて俺達に出来ることはないかって、サークルの皆で話し合って…」

「千羽鶴折って渡してもらおうと思って。でも、折角だから鶴じゃなくて、学院のエンブレムにしようって話になって…」

二人は、交互にそう説明してくれた。
 
そうだな。俺とシルナとイレースで、決めたもんな。

学院のエンブレム、青い薔薇にしようって。

「新聞部の三人組に頼んで、校内広報に載せてもらったんです。ナジュ先生の為に、皆で薔薇を折ろうって。…快く記事にしてくれました」

…あの新聞部三人組、そんなことを。

「すぐに千羽…じゃなくて、千輪、集まりました。ちょっと…オーバーしちゃってますけど」

「…」

「だから、これ…学院長先生の方から、ナジュ先生に渡してもらえませんか?俺達は行けないから…」

…一応。
 
生徒達には、ナジュが学院の医務室にいることを伝えていない。

国内の病院に入院しており、面会謝絶状態だと伝えてある。

生徒達を騙すのは本意ではないが、ナジュが医務室にいると知れば、生徒達は余計に心配し、医務室に殺到するだろうし。

特に、ナジュが倒れた本当の理由を、生徒達に伝える訳にはいかない。  

だから、生徒達の中で、本当のことを知っているのは、令月とすぐりの二人だけだ。
  
故に。  

生徒達はこうして、せめてもの励ましになればと…。

不安そうな顔で、紙の花束を差し出す生徒に、俺は胸が苦しくなった。