神殺しのクロノスタシス3

スメハラシルナは、放っとくとして。

俺達は、誰一人諦めてはいなかった。

「いっそ電気ショックで起きませんかね。バリッと一発食らわせたら、覚醒するんじゃないですか」

と、相変わらず過激な案を出すイレース。

それで起きるなら、本気でやりそうだな。

更に。

「お面、二つ目作ってきたよ」

令月は、例のジャマ王国のまじない面第二弾を、ナジュの傍に立て掛けた。

一つ目より、更におどろおどろしさが増してる。

最早ホラー映画。

「前より怖くしたから…。きっと不死身先生の中のあやかしも、怖がって逃げていくよ」

「…ナジュは別に、あやかしに囚われてる訳ではないだろ…」

それに対して、すぐりは。

「はい、ナジュせんせーあげる」

ラベンダーの花束を、ナジュの傍の花瓶に活けた。

パンケーキの匂いとラベンダーの香りが合体して、何とも言えない異臭に変わりつつある医務室。

とりあえず、シルナとパンケーキを追い出せ。
  
同じジャマ王国出身でも、ここまで見舞い品が違うとは。

「それどうしたんだ?すぐり…」

「園芸部でもらった…」

そうか。

お前が一番まともなお見舞いしてるよ。

…しかし。

「相変わらず、駄目か…」

一向に、ナジュが目を覚ます気配はない。

「えっ。パンケーキでも駄目なの!?」

当たり前だろ馬鹿。

何でお前は、それで行けると思ったんだよ。

「ま、まぁ…。意識はなくても、耳は聞こえてるはずだから。応答がなくても、呼び掛けるだけでも効果はあると思うよ」

と、天音。

そうなのか。

じゃ、俺達が毎日通って色々騒いでるのは、一応聞こえてるんだな。

なら。

「…いつまで寝てんだ、馬鹿」

言いたいこと、言わせてもらうぞ。

「全くこの、寝坊助野郎…。お前はぐーぐー寝てれば良いのかもしれないけど、こっちはお前に言わなきゃならないことが、たくさんあるんだからな」

まずは謝って。

それからぶん殴って。

そして…よく戻ってきたと、迎えてやらなきゃならないんだ。

「いつまで待たせる気だ?そうやって寝てれば、俺達がいつか諦めてくれると思ってるのか?」

だとしたら、とんでもない、大馬鹿者めだ。

「良いか、よく聞け」

ここにいる誰もが、誰も諦めちゃいない。
 
ずっと、お前が戻ってくるのを待ってる。

「魔導師に寿命はないんだからな…。お前が根負けして起き出してくるまで、延々待ち続けてやる。良いか?絶対諦めてなんかやらないからな」

お前が諦めたって、俺は、俺達は絶対諦めない。

希望を捨てたりはしない。 

お前はこんなところで死ぬ奴じゃないって、皆分かってるから。

「早く戻ってこい…。さもないと、目が覚めたとき、シルナの認知症が進んで、お前のこと分からなくなってるかもしれないぞ。そうなる前に、早く起きろよ」

「えっ。ちょ、羽久が私に失礼なこと言ってる!」

うるせぇ。

「絶対戻ってこい。ナジュ。良いか、お前は絶対戻ってくるんだ」

そしてまた、悪趣味な読心魔法で人をからかい。

シルナの秘蔵の菓子を盗み食いし。

生徒達に愛想振り撒いて、学院の風紀を乱し。

俺達の、大事な仲間でいるんだ。