俺達は、一向に諦めてはいなかった。
その日も、俺達は医務室に集まって。
ナジュの長い眠りを妨げるように、大騒ぎしていた。
「…考えたんだよ、羽久」
「…何を?」
「確かにチョコレートは美味しい。チョコレート菓子は何でも美味しい。それは今更確かめるまでもない事実だ」
真顔で何言ってんの?
「しかしね?チョコレート菓子には、僅かばかりの欠点がある」
…欠点?
何だ?
食べ過ぎると鼻血が出るとか?
それは迷信なんだっけ?
「匂いがね…。匂いが薄いんじゃないかという点だ」
「…」
…このおっさん、何言ってるんだろう。
「私ほどにもなると、半径5メートル以内に入るとチョコレートを感知出来るけど」
最高に無駄な能力だな。
「もしかしたら人間、寝てるときに傍にチョコレートを置かれても、『あ!カカオの匂いだ!』って気づかないんじゃないかと、最近思い始めたんだよ」
今?
お前、何千年と生きてて、そこに気づいたの今?
むしろ今までお前、人間寝てる間に傍にチョコレート置かれたら、『あ!カカオの匂いだ!』って気づいて起きると思い込んでたのか?
それお前だけだから。
「いやね?生徒に聞いてみたんだよ。寝てる間に、傍にチョコケーキ置かれたら、匂いで目を覚ますかな?って」
しかも、自分で気づいたんじゃなくて、生徒に聞いたのかよ。
「十人に聞いたんだけど、十人とも『多分気づかないと思います』って言われて」
そんなことを学院長に聞かれた、その十人の生徒が憐れで仕方ない。
何で十人も聞く必要があるんだよ。
一人で納得しろ。
「もしかしたら、チョコレートは人間が目を覚ますには、ちょっと匂いが薄いのかもしれない…」
「…」
…まぁ。
「あ!チョコレートの良い匂いだ!起きよう!」とは…ならんよな。
そんなことで起きるのは、シルナくらいだ。
お前が寝込むことがあったら、傍に山盛りチョコレート置いといてやるよ。
それにチョコレートって、何と言うか。
甘い匂いと言うよりは、ちょっと苦そうな、独特な匂いするよな。
あれがカカオの匂いってことなんだろうけど。
お菓子屋さんの前を通り過ぎて、「あーチョコレートの良い匂い〜」…とは。
あまり、ならないよな。
「故に私は、作戦を変えることにした!」
「…」
一ヶ月チョコレート戦法を仕掛け、見事に失敗したシルナが。
今度は、何を企んでいるのか。
聞かなくても分かる。
…匂いで。
「さぁナジュ君!存分にこの匂いを堪能して、そして目を覚ますんだ!」
シルナは、持参したケーキボックスの箱を開けた。
中には、芳ばしい香りを漂わせる、焼き立てのパンケーキが入っていた。
パンケーキの上には、たっぷりのバターと蜂蜜。
焼き立てパンケーキの芳ばしい香り、そして溶けたバターと、滴り落ちる蜂蜜の甘い香りが、医務室の中に充満していた。
…スメハラだ。
「あー良い匂い!良い匂い過ぎて私が食べたい!ナジュ君早く起きて!私が食べたくなっちゃうから!」
…勝手に食ってろ。
この場にいる、シルナ以外の誰もがそう思った。
その日も、俺達は医務室に集まって。
ナジュの長い眠りを妨げるように、大騒ぎしていた。
「…考えたんだよ、羽久」
「…何を?」
「確かにチョコレートは美味しい。チョコレート菓子は何でも美味しい。それは今更確かめるまでもない事実だ」
真顔で何言ってんの?
「しかしね?チョコレート菓子には、僅かばかりの欠点がある」
…欠点?
何だ?
食べ過ぎると鼻血が出るとか?
それは迷信なんだっけ?
「匂いがね…。匂いが薄いんじゃないかという点だ」
「…」
…このおっさん、何言ってるんだろう。
「私ほどにもなると、半径5メートル以内に入るとチョコレートを感知出来るけど」
最高に無駄な能力だな。
「もしかしたら人間、寝てるときに傍にチョコレートを置かれても、『あ!カカオの匂いだ!』って気づかないんじゃないかと、最近思い始めたんだよ」
今?
お前、何千年と生きてて、そこに気づいたの今?
むしろ今までお前、人間寝てる間に傍にチョコレート置かれたら、『あ!カカオの匂いだ!』って気づいて起きると思い込んでたのか?
それお前だけだから。
「いやね?生徒に聞いてみたんだよ。寝てる間に、傍にチョコケーキ置かれたら、匂いで目を覚ますかな?って」
しかも、自分で気づいたんじゃなくて、生徒に聞いたのかよ。
「十人に聞いたんだけど、十人とも『多分気づかないと思います』って言われて」
そんなことを学院長に聞かれた、その十人の生徒が憐れで仕方ない。
何で十人も聞く必要があるんだよ。
一人で納得しろ。
「もしかしたら、チョコレートは人間が目を覚ますには、ちょっと匂いが薄いのかもしれない…」
「…」
…まぁ。
「あ!チョコレートの良い匂いだ!起きよう!」とは…ならんよな。
そんなことで起きるのは、シルナくらいだ。
お前が寝込むことがあったら、傍に山盛りチョコレート置いといてやるよ。
それにチョコレートって、何と言うか。
甘い匂いと言うよりは、ちょっと苦そうな、独特な匂いするよな。
あれがカカオの匂いってことなんだろうけど。
お菓子屋さんの前を通り過ぎて、「あーチョコレートの良い匂い〜」…とは。
あまり、ならないよな。
「故に私は、作戦を変えることにした!」
「…」
一ヶ月チョコレート戦法を仕掛け、見事に失敗したシルナが。
今度は、何を企んでいるのか。
聞かなくても分かる。
…匂いで。
「さぁナジュ君!存分にこの匂いを堪能して、そして目を覚ますんだ!」
シルナは、持参したケーキボックスの箱を開けた。
中には、芳ばしい香りを漂わせる、焼き立てのパンケーキが入っていた。
パンケーキの上には、たっぷりのバターと蜂蜜。
焼き立てパンケーキの芳ばしい香り、そして溶けたバターと、滴り落ちる蜂蜜の甘い香りが、医務室の中に充満していた。
…スメハラだ。
「あー良い匂い!良い匂い過ぎて私が食べたい!ナジュ君早く起きて!私が食べたくなっちゃうから!」
…勝手に食ってろ。
この場にいる、シルナ以外の誰もがそう思った。


