神殺しのクロノスタシス3

――――――…その頃。  

俺は、『八千代』の言うところの、ランデブーの真っ最中だった。

悪かったねー、薄情で。
 
でもこちとら、いつもの楽しいランデブーじゃないんだよ。

「…折角、植えた苗が育ってきたのにな〜…」

…ツキナは、じょうろを片手に、畑の中にしゃがんでいた。

非常に、浮かない顔。

「ナジュ先生にも見て欲しいな〜…」

「…」

「ナジュ先生、いつ戻ってくるんだろ?」

「さーね…」

…あんたのせいだよ、ナジュせんせー。

折角放課後に、好きな女の子と二人きりなのに。

ツキナはずっと寂しそうな顔で、部活にも身が入らない様子。

原因は、ただ一つ。
 
言うまでもなく。

ナジュせんせーが、いきなり、全く園芸部に…それどころか、授業にも出てこなくなってしまったからだ。

まさか、読心魔法の暴走で、人格破壊された可能性がある、なんて、一般の生徒には言えないので。

ナジュせんせーは、重い病気にかかって長期療養中、ってことになっている。

そのせいだ。

ツキナは、折角すくすく育ってきたきゅうりの苗を、ナジュせんせーに見てもらいたくて楽しみにしてたのに。
  
いきなり病気療養なんて言われたら、そりゃショックも受ける。
 
ツキナだけじゃない。

あの顔だけはイケメンな教師、主に女子生徒に莫大な人気を誇っていたのだが。

それが突然いなくなり、別の教師(シルナ・エインリーの分身だが)が、授業を担当することになり。

生徒達の落胆ぶりは、生徒歴の短い俺でも感じ取れるほど。

教室にいても、食堂にいても、学生寮にいても。

一日に一度以上は、必ず何処かで誰かが口にする。

「ナジュ先生、大丈夫かな。いつ戻ってくるのかな」って。

実際、ツキナもこうして、ナジュせんせーのこと気にしてるし。

『八千代』に聞いたところによると、ナジュせんせーが目を覚ます気配はおろか。

その兆候すら見られないとのこと。

…気が重くなる。
 
ナジュせんせーがあんなことになったのは、俺に責任の一端がある。

その自覚があるから、余計に。  

…俺は、ナジュせんせーが読心魔法の訓練をしていることを知ってたのに。
 
俺だけが、そのことを知ってたのに。

止められなかった。気づけなかった。

学院長せんせーは、「すぐり君のせいじゃない」と言うけど。

何を言われたって、俺に責任の一端があるのは明白な事実。

気にするなと言われても、無理な話。

俺だって、そこまで薄情じゃないからね。

ナジュせんせーには、可及的速やかに、目を覚ましてもらわなきゃ困る訳だ。

…しかし…。

「はー…」

いつ目を覚ますのか、そもそも目を覚ますことは出来るのか…。

目を覚ましたとして、それはもとのナジュせんせーなのか…。

尽きない心配に、頭を悩ませていると。

「はい、見てすぐり君!」

「ぶふっ」

顔面に、いきなり何かを押し付けられた。