どうも皆さん、こんにちは。

ルーチェス・ナジュ・アンブローシアです。

その日、一時間目の授業で、覚えたての読心魔法を実践してみたものの。

調子に乗って十人くらい読んでたら、魔法が暴走し。

なんとその場にいた全員の心を読んでしまって、脳内キャパオーバー。

みっともなくわーわー騒いだ結果、学院長に気絶させられ、強制シャットダウン。

何だか深い深淵の底に引き摺り込まれるような、そんな錯覚を覚えながら意識を失い。

あーもう人生終わったのかもー。あれ?僕の悲願叶った?
 
いや待て、これじゃ僕だけが終わって、リリスには会えないじゃん。

ヤバいまだ死ねない、でも死にそう、うわーどうなるんだろう僕の運命。  

等々、色々なことを考えながら意識が薄れていって。
 
もう一生目覚めないのかなと思って。

そのまま、深い眠りに落ちていった…。





…のだが。

…誰かが、啜り泣く声で我に返った。
 
あれ、誰かが泣いてる。

何だろう、聞き覚えのある声…。

でも何だか僕、凄く疲れてしまったし。

ずっと死ぬことが夢だったんだし、もうこのまま、一生眠ってても良いんじゃないかな。

…ん?いや待て。

この声、何だか聞き覚えがある…?

あ、そうだこの声は。

何故忘れていたんだ、僕の安っぽい命よりずっと大切な人の声。

その声の持ち主が泣いてる。起きなきゃ。寝てる場合じゃない。アホか。起きろ!と。

自分を叱咤して、目を覚ますと。
 
そこは、僕の頭の中。

僕が唯一、愛する人と言葉を交わせる世界。

僕の精神世界だった。

…いや、精神世界で覚醒したからって、それは目が覚めたと言えるのか?

まぁ、そこは置いといて。

気がつくと、僕の目の前に、その人がいた。  

「リリス…」

紛うことなき。

僕の愛する人、その人であった。

「ナジュ君…」

リリスは、涙声で僕の名を呼んだ。
 
そうだ。

僕、そんな名前の人間だったなぁ。そういえば。

僕はリリスに膝枕された状態で、横になっていた。
 
…リリスは、泣いているけれども。

状況は、僕としては最高である。   

だって、好きな女の子に膝枕されてるんだよ?

すぐりさんだったら、吐血してるよきっと。

…ん?すぐりさん…。
 
誰だったっけ。

とにかく、今は目の前のリリスだ。

「おはようございます…」

「うぅ…。ナジュ君…」

僕が、丁寧に目覚めのご挨拶をすると。

リリスは、その大きな瞳を、更に大きく開き。  

大きな涙の粒をたくさん溢しながら、僕の顔に突っ伏して泣きじゃくった。