神殺しのクロノスタシス3

「身体の中をいくら調べても、毒に侵されてる部分が見つからなくて…。そんな『透明』な毒もあるの?」

「ないことはないけど…。こんな用途で使われるとは思えない」

天音せんせーの問いに、『八千代』が答えていた。

俺は、それどころじゃなかった。

まさか。

俺の、思い過ごしであってくれ。

でも。

俺達は、大きな思い違いをしているのではないか?

もし、これが毒によるものじゃないとしたら…。

「…あのさー、一つ聞いていい?」

「何だ?」

「頭抱えて、叫んでたって言ってたじゃん?」

さっき、症状尋ねたとき。

「あぁ…叫んでた」

「なんて、叫んでた?」

「なんて、って…。そういえば…これ以上は、とか…近寄らないで、とか言ってたけど…」

…これ以上。

近寄らないで。

「本当に、令月やすぐりの言う通り精神錯乱系の毒なら、そういう言葉が出てもおかしくないんじゃないか?」

そうだね。

本当に、それが毒なんだったら、ね。

「もしかして、幻覚とか見せられて…?そういう毒はある?」

「あるにはあるけど…」

思い出す。

散々俺と、心の仮面を破る為の訓練をしたナジュせんせー。

読心魔法の、二つの弱点。

一つは、俺が協力して解決した。

でもナジュせんせーは、まだ訓練を続けると言っていた。

何の訓練をするのかは聞かなかったけど…。

考えれば、おのずと見えてくる。

ナジュせんせーの読心魔法の、もう一つの弱点。

もしその弱点を、ナジュせんせーが克服しようとしていたのだとしたら?

もし、ナジュせんせーが。

同時に心を読めるのは一人だけ、という弱点を。

相手の目を見なければ心を読めない、という弱点を。

この、もう一つの弱点を克服しようとして、もしそれが成功していたのだとしたら?

まさか。だって、そんなこと不可能だ。

いくらナジュせんせーだって、自分の限界くらい分かってるはず。

…だけど。

ナジュせんせーは、自分が役に立たなかったことを、酷く気に病んでいた。 

仲間の信頼を失ってしまったと、自分のことを責めていた。

いつもの、理性のあるナジュせんせーならまだしも。

俺の心の仮面を剥がそうと、毎日キツい訓練を、一日も欠かさず、毎日限界まで行っていた。

そこまでして、自分の限界を越えようとしていた。

もしかして。

もしかして、ナジュせんせーは。

「まさか…」

俺がそう言いかけた、その時だった。