神殺しのクロノスタシス3

…成程。

やっぱり、ただ事ではなさそうだ。

「どーしたの、その人」

「…それが分からないから、お前達を呼んだんだよ」

そういうこと。

「症状は?」

目立つ外傷はない、そもそもこの人不死身だから、外傷だけならすぐに修復する。

それなのにベッドに眠らされている。

それはつまり、何らかの毒にやられたのだろう。

そう判断した『八千代』が、学院長に尋ねた。

だが、『八千代』じゃ駄目だ。

「毒魔法もまともに使えない君じゃ、分からないでしょ」

「でも…」

「それで?症状は何なの」

『アメノミコト』の毒魔法は、ルーデュニアなんかよりずっと発達している。
 
おまけに、種類もめちゃくちゃ豊富。

使い手によって得意とする毒も違うし、毒の種類を特定するのは困難だ。

だが、せめて症状だけでも分かっていれば、どんな系統の毒が使われたのかくらいは、検討がつく。

「頭を押さえて、ずっと叫んでた」

「…」

それって…。

「精神錯乱系の毒かな」

と、『八千代』。

そうだろうな。

特に『アメノミコト』は、ナジュせんせーが不死身の読心魔法使いであることを知っているのだから。

使うとしたら、身体じゃなくて、精神を侵す毒…。

…ん?

頭を押さえて…?

いや、でもまさか。

「身体に毒針は?」

「見つからなかった」

「そう…」

「経口摂取の毒?でも、いつの間に…どうやって…」

ナジュせんせーほどの魔導師だったら、食事をする必要はない。

飲み物や食べ物に仕込むとは考えづらいが…。

しかも、精神錯乱系の毒で経口摂取させるタイプなんて、聞いたことがない。

大抵は俺や『八千代』が使うように、毒針か…。

あるいは浸透圧式の注射器のようなものを使い、針の跡を残さないケースもあるが…。

「一応聞いておくが、すぐり」

と、羽久せんせー。

「何」

「お前…自爆したとき、毒爆弾の中に、変なもの仕込んだりは…」

疑ってるの、俺かよ。

「あのねー、あのとき俺、『八千代』を巻き添えに即死する為に自爆したんだよ?遅効性の、しかも精神錯乱系の毒なんて必要ないでしょ」

「そうか…」

あのとき使ったのは、即効性兼致死性の高い毒だけだ。

精神錯乱系の毒なんて一つも入れてない。

そもそも『アメノミコト』の稼業は、暗殺だ。

精神錯乱系の毒は、あるにはあるが、暗殺という目的を果たすには不充分な毒。

だって、いくら精神錯乱させても、死ぬ訳ではないのだから。

まぁ程度にもよるけどさ。

ましてやナジュせんせーは、不死身で、おまけに読心魔法という特殊な魔法使いだから、精神の方に攻撃するしかなかったのかも…。

でも、何でこのタイミングで、しかもナジュせんせー狙いで…。

…待てよ?

読心魔法の使い手?

俺の頭の中に、恐ろしい考えが浮かんだ。