神殺しのクロノスタシス3

―――――…風魔法サークルでの訓練を終えた、翌日。

早速実践…って訳ではないが。

僕は、会得した読心魔法を、部室以外の場所で使ってみることにした。

教室である。

折角風魔法の授業全般は、僕が任されているのだから。

そして座学の授業のときは、教室にはおよそ二十名近くの生徒が目の前にいる。

さすがに二十人は読心出来ないが、その半分なら余裕。

余裕になったのだ。これが。

凄いだろう?

そんな訳で、今度は教室で実践することにする。

教室で実践出来なくて、いざ戦場では使えないからな。

「こんにちはー。じゃ、授業始めますねー」

僕は、その日の朝一番。

風魔法の座学授業が行われる、四年生の教室に入った。

…さて。

じゃあ、僕の方も始めようか。

「今日はまず、テキストの24ページを開いて…」

テキストを開くと同時に。

僕は、生徒達の心をも開く。

手前にいる生徒を、同時に十人。

ズキン、と走る頭痛を無視して、素知らぬ顔で授業と読心を同時に始める。

「えっと、そこに書いてあるように、高度風魔法の魔導理論は、基礎魔導理論を応用して…」

イーニシュフェルト魔導学院の生徒達は、優秀だ。

授業中は、余所事を考えたりせず、真面目に授業に取り組む。

テキストを熱心に読み、そこに書かれている高度な魔導理論を理解しようと、頭を働かせる。

流れ込んでくる情報の波に、ズキン、と再び痛みを感じた、

そのときだった。

「…え?」

僕は、手前に座っている十人の心しか読んでない。

それなのに。

何故かその後ろの、十一人目の生徒の思考が、僕の頭の中にはいってきた。

それだけではない。

十二人目、十三人目の思考が、僕の頭の中に入ってきた。

勝手に。

待って。

僕、そこまで読んでない。

おかしい。

「…っ」

僕は、読心をやめようとした。

明らかに、僕の手に負える範囲を越えていた。

しかし。

読心魔法をやめたのに、やめたはずなのに。

止められなかった。

「…っ!?」

使用者である僕の意思に反して、勝手に読心魔法が暴走していた。

十三人目、十四人目。
 
待って。無理。そんなに読めない。

「…ナジュ先生?」

「どうしたんですか?」

不審がった生徒達が、僕に声をかけてくる。

途端に、先程より過剰な情報の波が押し寄せてきた。

『先生、どうしたんだろう?』

『具合でも悪いのかな』

『この間も一週間くらい休んでたし』

『授業、どうなっちゃうんだろ?』

「や、やめ…」

教室中の、全ての人間の思考が。

莫大な情報の波となって、僕の頭の中に押し寄せてきた。

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

頭が破裂しそうな激痛と苦痛で、僕は頭を抱えてその場に崩れ落ちた。