神殺しのクロノスタシス3

僕の読心魔法の弱点は、大きく分けて二つ。

一つは、心に仮面を被られると、心の奥、本心が読めない点。

こちらは、すぐりさんとの訓練を通して、ある程度解決した。

二つ目は、相手の目を見なければ、心を読めないこと。

そしてこの弱点の為に、同時に心を読めるのは一人だけに限られる。

相手の目を見なければ心が読めないのだから、当然と言えば当然だ。

同時に複数人の目を見ることは出来ない。故に、同時に複数の人間の心は読めない。

だから、僕はこの弱点を克服する。

目を見なくても、心を読めるようにする。

同時に、複数人に対して。

実は、この試みは、昔試したことがある。

当分昔だ。多分、まだリリスと出会って数年しかたってない頃だったと思う。

成長するにつれて、自分の読心魔法の熟練度が上がってることを感じ。

試しにと思って、やってみたのだ。

だが、失敗した。

同時に読心しようとした人数は精々、三、四人程度だったと思うが。

あのときは、見事に失敗した。

読めるには読めるのだが、僕の脳の処理速度が追い付かなかった。

溢れ返らんばかりの「情報」の渦に呑まれ、僕の頭が耐えきれずにパンクしてしまったのだ。

あれ以来、僕はこの試みを断念した。

と言うか、リリスに止められたのだ。

あのとき、僕が錯乱せんばかりに、見苦しく倒れたものだから。

リリスが、「もうやっちゃ駄目」と僕を止めた。

当時成長期だった僕の脳みそが、深刻なダメージを受けることを心配したのだ。

あの頃の僕は、リリスに従順な子供で。

それに、今と違って、読心魔法を極める必要も、特になかった。

だから素直に諦め、あれ以来、挑戦してみたことはなかった。

でも今は違う。

あれからもう何百年もたった。

リリスに守られるだけの、か弱いお子様じゃない。

自分で自分の身を守る…必要はないが(不死身なので)。

今は、自分の力で、他人の身を守る必要がある。

だから、今こそ。

僕は、複数人の同時読心を身につける訓練を、始めることにした。

まず三人。

何百年越しの頭痛はしたが、それだけだ。

大丈夫、制御出来てる。

比較的、三人共思考が穏やかなのも幸いしている。

シルナ学院長は、呑気にマカロン食べてるだけで。

考えてることと言えば、「マカロン美味しいな~。また生徒が遊びに来てくれかないかな~」くらい。

単純な脳みそでありがとう。

羽久さんは、特に何もしていない。

これが有り難い。

考えてることも、精々シルナ学院長を見て、「こいつ、まだ食うのかよ…」とドン引きしているくらい。

問題は、令月さんだ。

彼の思考の情報量が、一番多い。

何しろ、学院長から与えられた課題を解いているのだから、思考は目まぐるしく回っている。

令月さん、勉強熱心なのは良いことだが、今ばかりはもう少し、力抜いて問題に取り組んでくれないか。

いや、でも。

練習にしては、丁度良いレベルなのかもしれない。

他二人が比較的穏やかなお陰で、令月さんの情報量の多さにも、徐々に適応し始めてきた。

すると、そこに。

「学院長、入りますよ」

まさかの四人目。

イレースさんが、学院長室に入ってきた。