神殺しのクロノスタシス3

「ナジュ君~!何処行ってたの?しばらく見なかったから~!」

「なんか、すぐりのとこで悪さ企んでたそうじゃないか?」

と、羽久さん。

何故それを。

あぁ、令月さん経由で伝わってたか。

失礼だなぁ。何も悪いことなんか企んでないのに。

「人聞き悪いですねぇ。僕はただ、学生の甘酸っぱい青春の手助けをしてただけですよ」

「…??」

まぁ、その結果すぐりさんは。

白馬に乗る王子様になって、秘密のお花畑に小川を作り、そこで花の輪っかを作成する羽目になった訳だが。

それは僕のせいじゃないぞ。

恨むなら、そんな少女を好きになった自分を恨んでくれ。

「で?その青春プロジェクトは終わったのか」

「さぁ。あとは彼次第です」

すぐりさんが、ツキナさんの望む恋人になれる日は、いつ来るのだろうか。

そもそもそんな日は、ちゃんと訪れるのだろうか。

甚だ疑問だが。

「ナジュ君が来ない間、ナジュ君の分のお菓子、余っちゃって大変だったんだからね?もー」

「それはそれは、申し訳ないです」

いちいち僕の分まで用意してたんですか?

…そうですよね。

あなただけは、僕が「失敗」したときも、僕を責める気持ちはなかった。

今、改めて学院長の心の中を覗いてみても。

みすみす『玉響』さんを死なせてしまったことに対する批難の気持ちは、全く感じられない。

…そっと、他の人達の心の中も覗いてみる。

現在この部屋にいるのは、僕を除いて三人。

シルナ学院長、羽久さん、それから放課後学習会に来ている令月さん。

一人ずつ、順番に心を覗く。

怖かった。

羽久さんと令月さんは、まだ僕に対する批難の気持ちを持っているかもしれなかったから。

でも。

「…」

二人共けろっとして、僕を責める気持ちはないようだった。

羽久さんは、「こいつ、すぐりと組んで何を悪さしてたんだ…?」と思ってるようだし。

令月さんに至っては、目の前の課題の方に夢中なようで、僕のことを考えてすらいない。

…良かった。

…いや良くない。僕、別にすぐりさんと悪どいことを企んでた訳じゃないから。

失敬な。僕を何だと思ってる。

…まぁ良い。

この部屋にいるのは、三人。

三人か…。三人。

まぁ、最初の練習としては、丁度良いくらいか。

「ナジュ君にもマカロンあげるよ、はい」

「どうも」

正直今、マカロンのことなんてどうでも良いのだが。

とりあえず、笑顔でもらっておく。

そうだな。

この程度のこと、マカロン食べながら出来るくらいじゃなきゃ、話にならない。

…じゃあ、始めようか。