神殺しのクロノスタシス3

「やめるって…何をですか?」

「読心魔法の練習だよ…」

あぁ…その話。

「もう充分じゃない?心の仮面…壊せるようになったんでしょ?もう充分だよ」

「そうですね。そちらの訓練の方は、もう充分でしょうね」

あとは、実戦で通用するかどうかの話。

それはもう、やってみなければ分からない。

しかし。

僕が考えているもう一つの練習の方は、まだまだ手付かず。

誰に協力してもらう必要もないし、僕が勝手に頑張れば良いだけだから、後回しにしていたが。

明日から、ようやくそちらの練習に着手出来る。

「だからもう一つの方を、明日から練習するつもりなんです。それが出来れば、僕の読心魔法はもっと強化されて…」

「…強化…されなくても、良いじゃない」

…何?

「…リリス?」

「心の奥を覗くのも大変だったじゃない。もう充分だよ。これ以上頑張らなくて良いよ」

「…」

…それは、まぁ、確かに。

今まで、努力というものをしたことがほとんどない僕だから?

いきなり特訓とか始めたら、リリスとしては心配になるのかもしれないが。

「…リリスは、優しいですね」

優しい…と言うか。

僕に甘い。

多分、僕を望まずに不死身の身体にしてしまったという、負い目があるからだろうけど。

気持ちは嬉しいが、そんなに甘やかしてくれる必要はないのだ。

「…でも僕、もう嫌なんです。役に立たないとか言われるのも、思われるのも」

「…ナジュ君…」

「その為には努力しなくちゃいけない。足を止めちゃいけない。僕は元々敵側の人間だった。一度信頼を失ったら、取り戻すのは大変なんです」

「…」

あいつ頼りにならないな、とか。

役に立たないな、とか。

肉の壁になるしか能がない、とか。

そんな風に思われるのは、あまりに悲しいじゃないか。

「だけど…ナジュ君。あれは…危ないよ。前だって…」

「ねぇ、リリス」

あなたが悲しむ顔は見たくない。

でも僕にも、譲れないものがある。

「誰かに信頼されてないと、僕は…また、一人ぼっちだったときのことを思い出すんです」

誰にも頼れなくて、誰からも頼りにされなくて。

一人ぼっちで、ただ死に場所を求めて、狂ったように彷徨っていた日々のことを。

あんな思いは、もう二度としたくない。

あんな思いをしない為に、僕は強くならなければならない。

「ナジュ君…」

「だから、止めないでください。大丈夫ですよ、僕は…ちゃんと出来ますから」

「…無理はしないで。お願いだから、無理はしないでね」

「分かってますよ」

僕はリリスに微笑んでみせたが。

リリスは、笑わなかった。