神殺しのクロノスタシス3

…長い長い、攻防戦が終わった。

「あー、嘘、えー。もしかして見た?見えちゃった?読んじゃった僕の本心?」

「…まさか」

僕は、笑顔で答えた。

「実はあなたが、こっそりツキナさんの横顔を隠し撮りして、毎晩枕の下に潜ませてることなんか知りませんよ?」

「知ってるじゃんかほらぁぁぁ!」

顔真っ赤。

そんなことを必死に隠していたとは。

超下らね。

僕、数週間にも渡って、あなたの心の仮面の裏側を見ようと必死だったのに。

超下らない情報だった。

「絶対ツキナには言わないでよ、分かってると思うけど」

「大丈夫ですよ。僕も鬼じゃないですから」

お互い恋する男子として、それは勘弁しておくよ。

僕だって、毎晩精神世界に行っては、リリスとイチャイチャお喋りしてる訳だし。

「あとそれ、『八千代』にバラしたらぶっ殺すからね?」

「殺しても死にませんよ?僕」

「あぁそうだったぁぁぁもぉぉぉ!だから嫌だったんだよ、こんな訓練に付き合うのぉぉ!」

そんなに狼狽するとは。

まぁ可愛いものじゃないか。好きな女の子の写真を枕元に潜ませておくくらい。

年相応で。

…でも。

「…盗撮はちょっとヤバくないですか?」

「うるさいよ!仕方ないだろ、普通に写真撮らせてって言ったら不自然だから!」

笑顔で問いかけると、顔真っ赤で必死の答えが返ってきた。

あの子なら、「写真撮らせて」って言っても、喜んで応じてくれそうだけどな。

良いねぇ思春期って。青春。

「…まぁ、とにかく…。成功したの、おめでとう」

「ありがとうございます」

ようやく、一歩階段を上りきった気分ですね。

高い階段だった。

「…それと、一応言っとくけど」

「はい?」

「…見たんでしょ?僕の本当の…心の中」

「えぇ、見ましたね」

あなたがツキナさんに隠してる、恥ずかしいところも。

…後ろ暗いところも。

暗殺者時代の…血にまみれた、誰にも知られたくない汚いところも。

「…それ、言わないでね。誰にも」

「酷いですね。そんなこと、僕が人に喋ると思います?」

ましてや、光の方で生きていくと決めたあなたに。

闇の中に生きていた頃の記憶を、想起させるようなことは。

「万一にでも、うっかり喋られたら嫌だから言ってるんだよ」

「大丈夫ですよ。誰にも言いません。約束します」

…だって。

僕にだってあるんだから。

心の内側に隠した、自分の過去の後ろ暗いところが。