神殺しのクロノスタシス3

そして、この日。

その作戦が、ついに功を奏そうとしていた。

「…あ、やば」

仮面を剥がされる…もとい、

仮面に穴を空けられると察したらしいすぐりさんが、顔色を変えた。

「…ねー、ところでさぁナジュせんせー」

「…何ですか?」

「ナジュせんせーの恋人って、実は不細工だったりするの?」

何のことはない。

僕の集中力を逸らそうとしているだけだ。

その程度で、僕が動揺とするでも思ったか。

…内心ちょっと動揺したが。

「実は超美人ですよ…。見せてあげられないのが残念です」

「そんなに?ツキナより可愛かったりする?」

「そりゃあリリスの美しさと来たら、もう、一度見たら、ツキナさんレベルで可愛いと思ってた、自分の目の節穴さを呪いたくなるくらいです」

「えー、そんなに美人なんだ…」

この程度の会話で、僕は揺るがないぞ。

まぁちょっとは揺らいだが、相変わらず、心の蓋の隙間を捉えて離さない。

「うーん、駄目か…。じゃあさー」

「何ですか」

「そのリリスって人が、もし内心『実はシルナ学院長の方がタイプなんだけどな…』とか思ってたら、どうする?」

僕の心を揺さぶりたくて必死なようだな。

本当に揺さぶられるからやめてくれ。

だが、残念だったな。

相思相愛の僕達に、そんなことは有り得ない。

そしてもし、万に一、いや、億に一、そんなことが有り得たとしたら。

「シルナ学院長の方がタイプなら、僕も学院長みたいになります。全力で努力して、シルナ学院長より好きになってもらえるように変わります」

「えー。じゃあ、頑張って学院長みたいになったのに、今度は『やっぱり羽久せんせーみたいな人の方が好みだな~』って言われたら?」

「そのときは羽久さんにクラスチェンジします。リリスの好みが何百回何千回変わろうと、その度に僕は、彼女が好きになってくれる僕に変わります」

「…恐ろしいほどに一途なんだね、君…」

何のことはない。

不死身の身体で、死ぬ方法を探していた日々に比べれば。

そうだ。

全部全部、どんな努力も苦労も。

あの日々に比べれば、楽園みたいなものだ。

だから。

「あっ、やば」

「…見つけた」

すぐりさんの、心の仮面の向こう側。

深淵の先にあるものを、僕は見つけた。