神殺しのクロノスタシス3

「七年間土の中で寝て過ごして、地上に出てきたセミって…こんな気持ちなんですかね…」

「…帰ってきたと思ったら、悟った顔でなんか言ってるぞ、シルナ」

「う、うん…。とにかく、戻ってきてくれて良かった。お帰り、ナジュ君」

「ただいま」

ようやく、お馴染みの学院長室に戻ってくることが出来た。

医務室はもう良い。もう当分良い。

「ちゃんと内臓しまってきたか?」

「完璧ですよ!一時は肝臓がはみ出して大変だったこともありますが」

「…」

何だ、その微妙な顔は。

今は無事に内臓収納してきたんだから、それで良いだろう。

「戻ってきたからには、私達が代わっていた分の授業担当は、またあなたに戻しますよ」

と、イレースさん。

帰ってきた瞬間に仕事を割り振る、その容赦のなさは相変わらず。

いつもなら、うげーとなるところだが。

今回は。

「はい、これ引き継ぎの資料です。精々一週間なので、大したことはしてませんが」

「了解です」

教職くらいは真面目にやらないと、本当にお前、何の為にここにいるの?って感じだから。

真面目にやろう。

それより。

「…放課後学習会、相変わらず令月さん一人なんですね」

「うん」

放課後に学院長室に来て、これまでの不足分の勉強を行う、通称放課後学習会。

令月さんとすぐりさんが和解したらしいから、今はもう、一緒にやってるものと思っていたが。

相変わらず、令月さん一人しかいない。

もう一人は何処だ。

「すぐりさんは?サボりですか?」

「さぼ…。一応課題を渡したらやってはくれるから、サボりではないけど」

「じゃあ、どちらに?」

「園芸部のところにいるよ」

と、令月さん。

「ほう?」

園芸部だと?

「あの人、園芸部に入ったんですか」

「うん、なんか好きな女の子に誘われたんだって。一緒に大根育てようって」

何それ。青春。

「良いですねぇ、青春っぽくて…。好きな女の子と…。うん、僕はアリだと思いますよ」

ただ、大根である必要はないと思う。

そして、園芸部である必要もない。

何だろう。その女の子、園芸好きなんだろうか。

「すぐりさん、畑仕事とかしたことあるんですかねぇ」

「ないと思うなー」

元暗殺者だもんね。

元暗殺者が畑で大根作り。シュールな絵面だなぁ。

まぁ。

元『カタストロフィ』のメンバーが、イーニシュフェルトで教師やってるような時代だからな。

元暗殺者が、畑で好きな女の子と大根育ててても、おかしくはない。

おかしいけど。

ま、世の中、何が起きるか分からないってことで。

「じゃ、すぐりさんは学院長室には来ないと?」

「来ないと思うよ。この一週間、ずっと園芸部の方に入り浸りみたいだし」

好きな女の子と、片時も離れたくない。分かります、その気持ち。

痛いほど分かります。

「成程、そうですか」

「…お前、何でそんなにすぐりのこと気にしてるんだ?」

…ぎく。

…羽久さん、あなた鋭いこと聞きますね。