神殺しのクロノスタシス3

「ヴァルシーナのときからそう。すぐりさんのときもそう。心につけた仮面は、完璧なものじゃなかった」

「…ナジュ君…」

違和感はあったのだ。

透明なはずの水面を覗いても、水底が見えない違和感。

何かおかしい、いつもと違う。

それは分かっていた。分かっていたのに…。

僕は、そこを追及することなく、みすみす見逃し、挙げ句こんな結果になった。

僕があの違和感の正体を、ちゃんと探っていれば。

心の仮面の…その隙間に、気づけたかもしれないのに。

僕の怠慢だった。

自分の読心魔法は完璧だと、無意識にたかを括っていた。

その結果が、これだ。

「…このままじゃ僕は、自分を許せない」

僕が役に立つのは、肉の壁と、それから読心魔法だけ。

その読心魔法に欠陥があると見つかって、僕の信頼はだだ下がりだ。

僕は努力を怠っていた。

そのせいで、信頼を失った。

失った信頼を取り戻すには、これまで以上の努力をしなければならない。

ちょっと手習いで覚えた、小手先の空間魔法とか、そんなんじゃなくて。

もっと、自分の長所を磨くのだ。

不死身は、もうこれ以上どうにも出来ない、変えることは出来ないから。

今度は、読心魔法の方を。

「ナジュ君は…このままで良いんだよ。もう充分頑張ってるよ」

「…ありがとうございます」

リリスは、優しいからそう言ってくれる。

でも現実は、そんなに優しくない。

すぐりさんが心に仮面をつけ、僕の読心魔法を謀ることが出来たのだから。

今度戦うことになるかもしれない、『アメノミコト』の構成員。

確か、『終日組』だったか。

そのメンバーは、多分僕の読心魔法の欠点を共有していると思っていた方が良い。

すぐりさんが出来たことを、他の暗殺者が出来ないはずがない。

きっと、僕の読心魔法の対策をして、臨んでくるはずだ。

だったら。

そのときに、また役立たずだと思われたくない。

「僕、頑張りますから。応援してください」

「ナジュ君…」

「そんな顔しないでくださいよ。大丈夫ですから」

リリスは心配性だ。

リリスは優しい。

それは嬉しいし、有り難いけど。

僕はもっと、自分の存在価値を証明しなければならないのだ。

「…無理しないでね、お願いだから」

「分かってますよ」

もう二度と、役立たずなんて言われたくない。

その為に僕は、もっと頑張らなければならないのだ。