神殺しのクロノスタシス3

…僕だって。

ずる休みは嫌いじゃない。

教師のゴールデンウィークだと思えば、こうしてダラダラ過ごすのも悪くない。

だが。

今ばかりは、素直に休息を楽しめる気分ではない。

むしろ授業に出て、自分の気を逸らしてくれるものが欲しかった。

そうしないと、嫌でも考えてしまう。

…自分の、無力さというものを。

数日前、花曇すぐりに言われた言葉が、今でも頭に残っている。

慢心、だと。

あの言葉が、頭に突き刺さって離れない。

その通りだと思ったからだ。

そう、僕は自分の力に、能力に、慢心していた。

どうせ僕は不死身だから。死にはしないから大丈夫だと。

そりゃ確かにそうなんだけど。

問題は、読心魔法の方だ。

花曇すぐりによって、僕の読心魔法の弱点が、いくつも明らかになった。

自覚している弱点と、自覚していない弱点の両方が。

自覚している弱点の方はと言うと。

まず、相手の目を見ないと心を読めないという点。

読心魔法という性質上、これはやむを得ないことだ。

だからああやって、目を閉じられたり、背中を向けられたり。

僕の視界から外れた位置に立たれると、相手の心を読むことは出来ない。

知られてしまえば、対策は簡単だ。

何なら、厚いサングラスやアイマスクをつけられるだけで、読心魔法は簡単に無効化されてしまう。

この弱点は自覚していたから、自分から喋ったことはない。

だが、少し調べれば分かるはずだ。

僕が読心魔法を使っているときの状況を、冷静に分析すれば。

それに、一度に心を読める相手は一人だけ、という弱点も。

これも自覚していた。

僕は同時に、複数人の心を読むことが出来ない。

目を合わせてないと読めないから、当然なのだが。

あくまで目の前にいる人間、一人ずつしか読むことが出来ない。

…あの『玉響』という少年を、みすみす死なせてしまったのは、そのせいだ。

僕は誰にも、口には出さなかったが。

『玉響』さんが死んでしまったのは、僕のせいだと思っている。

何の為に、僕があの場にいたと思ってるのだ。

僕はあのとき、ずっと『玉響』さんの心を読むことに集中していた。

彼が本当に改心しているのか、彼が本当に寝返るつもりになったのか、そればかりを気にしていた。

『玉響』さんは、本当にこちら側につくつもりでいた。

暗殺稼業から足を洗い、光の方に歩き出そうとしていた。

だが、花曇すぐりが、それを阻んだ。

じゃあ、『玉響』さんが死んだのは、すぐりさんのせいか?

違う。

あれは、僕のせいだ。