─────…学院長室に、白煙が舞った。
すぐりが、魔力で作った爆弾を抱いて、令月に飛び掛かった。
そこまでは見えた。
そして。
白煙をかき分けた向こうに、半ばペースト状になった赤い肉片が見えた。
「…!おまっ…!」
それが誰なのか認識した途端、俺は叫び声をあげた。
「ナジュ…!!お前、この、馬鹿っ!!」
全身ペースト状に潰され、顔も半分消し飛んだナジュが、床に倒れていた。
すぐりが令月に抱きつく前に、その間に滑り込んだのだ。
そして、すぐりの代わりに爆弾を自分が抱き締め。
一瞬だけ、空間魔法で別空間に飛び。
そこで起爆させ、また戻ってきたのだ。
「あ、はは…。見よう…見まねで…空間、魔法…習っといて、正解だっ…た…」
「ナジュ、お前!この馬鹿!なんてことを…!」
「め…っちゃ痛い…。これ…僕、不死身…じゃなかったら、死んで…ましたよ…」
笑って言うことじゃねぇだろ。
「ナジュ君…!」
シルナが、すぐさま回復魔法をかけた。
だが、恐ろしく治りが悪い。
毒魔法の使い手であるすぐりが、特別に作った爆弾なのだ。
爆弾の中に、毒を練り込むくらい、訳ない。
「…!」
すぐりは、渾身の特攻をナジュに阻止され、呆然と立ち尽くしていたが。
「…何で…だよ…」
「…!令月!」
すぐりは令月の襟首を掴み、思いっきり壁に押し付けた。
「何でなんだよ!いつもいつも!お前ばっかり…!お前ばっかり大事にされて、お前ばっかり認められて、守られて、俺と同じ、血塗れの手をしてる癖に。お前だけ真っ当に人生やり直す機会を与えられて!」
「…『八千歳』…」
「生まれながらの人殺しには、そんな機会すらないんだよ!お前みたいに、洗脳されて人殺ししてた訳じゃないから!自分の意思で殺してた俺には、もうやり直す機会もないんだよ!死ぬしかないんだよ!せめてお前を巻き込んででも死ななきゃ、何の意味もない人生になるんだよ!俺に殺された人も報われないんだよ!」
「…」
「それなのに…何でお前は生きてるんだ。何でお前だけ…!いつもいつも…!」
劣等感。
劣等感だ。
自分が相手より劣ってるのが分かってて、それが許せなくて。
追い付こうと必死に手を伸ばすのに、相手は自分より、ずっと高いところにいる。
自分では、絶対に届かないところに。
ならば、せめて。
自分の命を捨ててでも、相手を道連れにして蹴落としてやりたい。
だって、そうでもしなきゃ。
相手を追い抜こうと、血を吐くほどに頑張った自分の努力が、全部無意味だったことになってしまうから…。
…すぐり。
それは違う。
それは違うんだ。
お前は、そうじゃなくて…。
…すると。
「…!?」
「…」
令月は、すぐりに襟首を掴まれたまま。
そのまま、すぐりの背中に手を回し、彼をぎゅっと抱き締めた。
すぐりが、魔力で作った爆弾を抱いて、令月に飛び掛かった。
そこまでは見えた。
そして。
白煙をかき分けた向こうに、半ばペースト状になった赤い肉片が見えた。
「…!おまっ…!」
それが誰なのか認識した途端、俺は叫び声をあげた。
「ナジュ…!!お前、この、馬鹿っ!!」
全身ペースト状に潰され、顔も半分消し飛んだナジュが、床に倒れていた。
すぐりが令月に抱きつく前に、その間に滑り込んだのだ。
そして、すぐりの代わりに爆弾を自分が抱き締め。
一瞬だけ、空間魔法で別空間に飛び。
そこで起爆させ、また戻ってきたのだ。
「あ、はは…。見よう…見まねで…空間、魔法…習っといて、正解だっ…た…」
「ナジュ、お前!この馬鹿!なんてことを…!」
「め…っちゃ痛い…。これ…僕、不死身…じゃなかったら、死んで…ましたよ…」
笑って言うことじゃねぇだろ。
「ナジュ君…!」
シルナが、すぐさま回復魔法をかけた。
だが、恐ろしく治りが悪い。
毒魔法の使い手であるすぐりが、特別に作った爆弾なのだ。
爆弾の中に、毒を練り込むくらい、訳ない。
「…!」
すぐりは、渾身の特攻をナジュに阻止され、呆然と立ち尽くしていたが。
「…何で…だよ…」
「…!令月!」
すぐりは令月の襟首を掴み、思いっきり壁に押し付けた。
「何でなんだよ!いつもいつも!お前ばっかり…!お前ばっかり大事にされて、お前ばっかり認められて、守られて、俺と同じ、血塗れの手をしてる癖に。お前だけ真っ当に人生やり直す機会を与えられて!」
「…『八千歳』…」
「生まれながらの人殺しには、そんな機会すらないんだよ!お前みたいに、洗脳されて人殺ししてた訳じゃないから!自分の意思で殺してた俺には、もうやり直す機会もないんだよ!死ぬしかないんだよ!せめてお前を巻き込んででも死ななきゃ、何の意味もない人生になるんだよ!俺に殺された人も報われないんだよ!」
「…」
「それなのに…何でお前は生きてるんだ。何でお前だけ…!いつもいつも…!」
劣等感。
劣等感だ。
自分が相手より劣ってるのが分かってて、それが許せなくて。
追い付こうと必死に手を伸ばすのに、相手は自分より、ずっと高いところにいる。
自分では、絶対に届かないところに。
ならば、せめて。
自分の命を捨ててでも、相手を道連れにして蹴落としてやりたい。
だって、そうでもしなきゃ。
相手を追い抜こうと、血を吐くほどに頑張った自分の努力が、全部無意味だったことになってしまうから…。
…すぐり。
それは違う。
それは違うんだ。
お前は、そうじゃなくて…。
…すると。
「…!?」
「…」
令月は、すぐりに襟首を掴まれたまま。
そのまま、すぐりの背中に手を回し、彼をぎゅっと抱き締めた。


