もう、いちいち言うまでもないだろう。
どんなに僕達が、大切に生きようと誓ったところで。
現実は残酷だ。
僕は、僕達は、判断を間違えた。
いずれ失われると分かっている希望に、すがりつくという愚行を犯した。
その報いは、遠からずやって来た。
あの日の試験、僕の対戦相手は、キエルだった。
対戦相手を知らされたとき、僕はとうとう、「来るべきものが来た」と思った。
いつか、こうなることは分かっていた。
同級生の中で、生き延びられるのは一人だけ。
今月を何とか生き延びられても、来月生き残るかは分からない。お互いに。
そして僕達は、まるで運命のように、互いの対戦相手になった。
あるいはもしかしたら、「先生達」がわざと、僕らを対戦相手にしたのかもしれない。
僕達が友情を育んでいることを知って。
僕達が、暗殺者に必要のない「感情」を抱き始めていることを知って。
そんな甘い幻想を、完膚なきまでに切り裂く為に。
僕はそのとき、本当に死を覚悟した。
キエルは、強かったから。
彼女には、「蟲毒の試験」最後の一人になれる素質があった。
僕よりずっと魔導適性が強くて、体術にも優れていた。
訓練で何度か彼女と戦ったこともあったが、僕は彼女に勝てたことは一度もなかった。
だから、この試合でどちらが勝つかなんて、言うまでもなかった。
でも、これはいつもの訓練ではない。
とどめを刺す、すんでのところでストップが掛かる、いつもの訓練じゃない。
とどめを刺すまで終わらない、本物の殺し合い。
僕達は互いに、顔面蒼白で、頭を空っぽにして戦った。
僕にキエルを殺す勇気があったのかは分からない。
覚えてない。
ただ、目の前にいる「敵」が、自分にとって唯一の友達で、命の恩人であるのだという事実を。
必死に、必死に否定しようとして。でも頭の中では、それは紛れもない事実なのだと理解していて。
本能的に身体を動かして、魔法を使ってはいたけれど。
それは無意識の行動で、戦術も糞もなかった。
キエルもまた、そうだったに違いない。
そして。
決着は、あっさりとついた。
僕は一度も、訓練でキエルに勝てたことはなかった。
訓練でも勝てないのに、頭の中真っ白で、本番の試験で、勝てるはずがなかった。
気がついたら、僕の手に武器は何一つなく。
キエルが、僕の上に馬乗りになっていて。
キエルの手には、小刀が握られていた。
その切っ先は、真っ直ぐに僕の喉元に向いていた。
…あぁ、終わったと思った。
同時に、安心した。
僕はここで死ぬが、代わりにキエルは生き残る。
キエルの才能なら、きっと「蟲毒の試験」の最後の一人に残れるだろう。
僕の分も、彼女が生きてくれる。
一日一秒を、噛み締めるように。
僕の死を乗り越えて、キエルは生きていくのだ。
そう思うと…悪くなかった。
自分の人生に、意味が生まれたような気がした。
しかし。
…そうは、ならなかった。
キエルがすんでのところで…判断を間違えたからだ。
「…む、無理だよ…」
「…?」
キエルは、小刀を取り落とした。
泣きじゃくり、僕の上に馬乗りになったまま、両手で顔を押さえた。
「無理だ…。君を殺すなんて、私には出来な、」
そこまでだった。
キエルの命は、そこまでだった。
僕の目の前で、キエルの頭部が吹き飛ばされた。
どんなに僕達が、大切に生きようと誓ったところで。
現実は残酷だ。
僕は、僕達は、判断を間違えた。
いずれ失われると分かっている希望に、すがりつくという愚行を犯した。
その報いは、遠からずやって来た。
あの日の試験、僕の対戦相手は、キエルだった。
対戦相手を知らされたとき、僕はとうとう、「来るべきものが来た」と思った。
いつか、こうなることは分かっていた。
同級生の中で、生き延びられるのは一人だけ。
今月を何とか生き延びられても、来月生き残るかは分からない。お互いに。
そして僕達は、まるで運命のように、互いの対戦相手になった。
あるいはもしかしたら、「先生達」がわざと、僕らを対戦相手にしたのかもしれない。
僕達が友情を育んでいることを知って。
僕達が、暗殺者に必要のない「感情」を抱き始めていることを知って。
そんな甘い幻想を、完膚なきまでに切り裂く為に。
僕はそのとき、本当に死を覚悟した。
キエルは、強かったから。
彼女には、「蟲毒の試験」最後の一人になれる素質があった。
僕よりずっと魔導適性が強くて、体術にも優れていた。
訓練で何度か彼女と戦ったこともあったが、僕は彼女に勝てたことは一度もなかった。
だから、この試合でどちらが勝つかなんて、言うまでもなかった。
でも、これはいつもの訓練ではない。
とどめを刺す、すんでのところでストップが掛かる、いつもの訓練じゃない。
とどめを刺すまで終わらない、本物の殺し合い。
僕達は互いに、顔面蒼白で、頭を空っぽにして戦った。
僕にキエルを殺す勇気があったのかは分からない。
覚えてない。
ただ、目の前にいる「敵」が、自分にとって唯一の友達で、命の恩人であるのだという事実を。
必死に、必死に否定しようとして。でも頭の中では、それは紛れもない事実なのだと理解していて。
本能的に身体を動かして、魔法を使ってはいたけれど。
それは無意識の行動で、戦術も糞もなかった。
キエルもまた、そうだったに違いない。
そして。
決着は、あっさりとついた。
僕は一度も、訓練でキエルに勝てたことはなかった。
訓練でも勝てないのに、頭の中真っ白で、本番の試験で、勝てるはずがなかった。
気がついたら、僕の手に武器は何一つなく。
キエルが、僕の上に馬乗りになっていて。
キエルの手には、小刀が握られていた。
その切っ先は、真っ直ぐに僕の喉元に向いていた。
…あぁ、終わったと思った。
同時に、安心した。
僕はここで死ぬが、代わりにキエルは生き残る。
キエルの才能なら、きっと「蟲毒の試験」の最後の一人に残れるだろう。
僕の分も、彼女が生きてくれる。
一日一秒を、噛み締めるように。
僕の死を乗り越えて、キエルは生きていくのだ。
そう思うと…悪くなかった。
自分の人生に、意味が生まれたような気がした。
しかし。
…そうは、ならなかった。
キエルがすんでのところで…判断を間違えたからだ。
「…む、無理だよ…」
「…?」
キエルは、小刀を取り落とした。
泣きじゃくり、僕の上に馬乗りになったまま、両手で顔を押さえた。
「無理だ…。君を殺すなんて、私には出来な、」
そこまでだった。
キエルの命は、そこまでだった。
僕の目の前で、キエルの頭部が吹き飛ばされた。


