神殺しのクロノスタシス3

翌日。

「すぐりく~ん!助けて~っ」

「…」

昨日だよ?

昨日、言ったばかりなんだよ?

近寄るな、近寄ったら危ないって。

その翌日に。

自分から、のこのこ近づいてきた。

藪を見つけたら、ヘビがいないか探すタイプだな。

そのヘビが、どんな毒を持っているかも考えずに。

だから、俺がやるべきことは。

彼女を無視して、自分から遠ざけること…。

…の、はずなのに。

「なにぃ~?また半泣きで。何か困り事?」

「そうなの~!何とかして~」

俺はどうしてか、それが出来ない。

「それって、俺が何とか出来ることなの?」

「うん!お願い!今日は罰掃除しなくて良いから、協力して欲しいの!」

罰掃除しなくて良いから?

一体どうしたことか。己が美化委員であることを誇るツキナが、罰掃除より優先させるほどの困り事があるとは。

もしかして、何者かに命でも狙われてるんじゃないか…と、思ったら。

放課後。

連れていかれたのは、学院の敷地内に併設された稽古場であった。

…何をするんだ?ここで。

果たし合い?

「俺、ここで何すれば良いの?」

「お願い、すぐり君。私の練習相手になって」

はぁ、成程。

「今度実技授業で、模擬戦闘訓練があるでしょ?」

「あ~…。そんなのあったね~」

何でも、二年生になったらそういう訓練が始まるらしい。

遅いよねぇ。

殺し合いの訓練なんて、もっと幼い頃からやらないと、身に付かないよ。

俺は学院の授業とか成績とか、ハナからどうでも良いと思ってたから、全然気にしてなかったが。

ツキナは、そうではないらしく。

「私、模擬戦闘訓練、すご~く苦手なんだよぅ。すぐり君、相手になって」

「イーニシュフェルトの生徒の癖に、魔法苦手なの?」

「魔法が苦手なんじゃないよ。魔導人形相手のときは大丈夫なんだもん。でも相手が人間になると、途端に怖くなっちゃうの!」

「…へー…」

変わってるね。

俺は、むしろ逆かな。

叩いても殴っても、血の一滴も流れない魔導人形の方が、余程不気味だ。

「…まぁ、良いや。相手したげる。いくらでも掛かっておいでよ」

「うん!ありがとう!すぐり君も反撃して良いからね!実戦さながらで!」

え。俺もやり返して良いの?

それはなぁ~…。参っちゃうよな~。

…さすがに、糸やワイヤーを出すのはやめとこう。

珍しく、普通に…杖で戦うとするか。

「それじゃあ行くよっ!準備は良い?」

「はーい。何処からでもどーぞ」

腐っても、相手はイーニシュフェルト魔導学院の生徒。

舐めてかかると、こちらが恥をかくことになりかねない…。