神殺しのクロノスタシス3

─────…久々に見た気がする。令月の顔。

やっぱりムカついたけど、でも。

ツキナに言われた通り、謝ってきてやったよ。

これで良いんだろ。

校舎玄関に戻ると、ツキナが仁王立ちで待っていた。

「あ!すぐり君!ちゃんと謝ってきた?」

「…謝ったよ…。これで良いんでしょ」

「うん!宜しい!」

「…」

何でだ。

何で俺が、こんなクラスメイトの女子に言われたからって。

令月なんかに、頭を下げなきゃならないんだ。

意味が分からない。

「…それで、すぐり君」

「…何だよ」

「何でその人と喧嘩なんてしたの?」

別に喧嘩…した訳じゃないけど。

「その人は何?すぐり君に嫌なことでもしたの?」

「嫌なことって言うか…馬鹿にしてくる」

顔面を思い出しただけで、ムカついてくる。

昔からそうだ。

会ったら、いつも殺したくなる。

「何て言われるの?何かされるの?」

「…え?」

「だって馬鹿にされるんでしょ?具体的に何されるの?」

…具体的に…。

…何か、されたことがあったかな。

いや、そうじゃない。

「態度。態度が馬鹿にしてるんだよ。もう、存在そのものが俺を侮辱してるって言うか」

「何それ!じゃあその人、全然悪くないじゃない!」

「…!」

考えてみたことすらなかった。

そう言われてみれば、そうだ。

馬鹿にされてると思い込んでるのは俺だけで、『八千代』にはそういうつもりなんて全く…。

でも、ムカつくものはムカつく。

「そういうのはね、すぐり君。嫉妬って言うんだよ」

「…嫉妬…?」

「そう、嫉妬」

…嫉妬。

何だ、その意味不明な感情は。

何で俺が、『八千代』なんかに嫉妬しなきゃならない。

いや、でも。

俺はずっと『八千代』の背中を追いかけ続けて…いつか絶対越えてやると思って…。

それなのに、魔導適性もないような、中途半端な暗殺者に負けて…。あいつだけが、頭領様に認められて…。

…俺は、それが悔しかった。

だから、嫉妬…?

「嫉妬なんかしなくても、すぐり君にはすぐり君の、良いところがあるよ」

「…俺の良いところって、何?そんなのある?」

暗殺が得意なこと以外、何かある?

その得意な暗殺でさえ、『八千代』に負けたのに…。

「素直で良い子なところ!だってすぐり君、一ヶ月罰掃除って言っても、ちゃんと毎日来てるし、それに、学院長先生の課題も、ちゃんとやってるでしょ?」

「…それは…」

「大丈夫だよ。すぐり君はとっても良い人だよ。だから他の人と比べなくて良いんだよ」

そう言って、ツキナは嬉しそうにぴょこん、と飛んでやって来て。

「ちゃんと謝って偉いね~。よしよし」

…撫でられた。

…意味が分からない。

本当に…意味が分からない。

「…はぁ…」