神殺しのクロノスタシス3

─────…その頃、学院長室では。

「…すぐりの奴、来ないな…」

「来なくなったね」

令月の、あの桜餅事件以来。

すぐりが放課後学習会に顔を出すことは、一切なくなってしまった。

一応、シルナが作った課題は、真面目にやっているようだが。

ここに来ることはなくなった。

いるのは相変わらず、シルナと令月と俺と。

「…」

そして何故か、最近妙に口数が少なくなって、気持ち悪さを感じてきたナジュだけだ。

精神世界でリリスと喧嘩でもしたのだろうか。

「やっぱり桜餅嫌いだったのかな?」

「…そういう訳ではないだろ…」

あのな、令月。

多分、お前の天然…もとい、無神経なところが嫌われてるんだと思うぞ。

そういうところ、お前ちょっと、ベリクリーデと似てるよ。

「『八千歳』はちゃんと強いのに、自分でその強さを認められなくて、弱いと思い込んじゃってるんだよ」

「…」

良いこと言うな、お前。

ベリクリーデと似てるとか言ってごめん。

ベリクリーデよりは思慮深かった。

「本当になぁ…」

あいつは自分の中で「自分より強い『八千代』」という壁を作ってしまって。

その壁を乗り越えようと必死なのだ。

自分がもう、とっくにそんな壁は乗り越えていることも知らずに。

…でも。

「だからって桜餅顔面シュートはいかんだろ」

それはそれ、これはこれだ。

あれだけは、俺もまだ許しちゃいないぞ。

令月は気にしてないようだが…。

「なぁシルナ。やっぱりすぐりのところに行って、今からでも放課後学習会に参加するように…」

さっきからずっと黙ってるシルナに、声をかけようとしたら。

何故かシルナは、頭の中お花畑みたいな顔をして、チョコレートを摘まんでいた。

「いやー…。その必要はないんじゃないかなー」

…は?

「芽生え…。恋の芽生えだよこれは…。シュニィちゃんのとき以来…。青春だ…」

…?

なんかブツブツ呟いてるんだが、あれは何だ?認知症の始まりか何か?

「羽久が私に…失礼なことを考えてる気がするけど…気にならないや…」

「…あ、そ」

とにかく、頭の中お花畑なのはよく分かった。

まぁ、それはいつものこととして。

それよりすぐりだよ。

すぐりを何とか、また学院長室に呼び出す方法を、何か考案しなくては…と。

思っていた、そのとき。

いきなり、ノックもなしに、バーンと学院長室の扉が開いた。

何事かと思ったら、そこには。

「え、すぐり…?」

何とかしてここに連れてこさせねば、と思っていた張本人が。

こちらから誘うまでもなく、向こうから現れた。

い…一体どういう風の吹き回しだ?