「元気ですか?」

 あなたと離れて半年が過ぎました。たった半年と笑わないでください。一緒にいればあっという間に過ぎゆく時間でも、一人で過ごすとこんなにも長く感じるとは思いもしませんでした。寂しくて、逢いたくて泣いた夜もあります。全て放り捨て、あなたの元に行きたいと何度も考えました。

「必ず迎えに行くから」

 あなたのその言葉が私の支え。ただの口約束かもしれません。だけど私はあなたを信じいます。信じてるから頑張れるのです。あなたが側にいてくれなくても、頭を優しく撫でてくれなくても、私はあなたを想い続ける事ができるのです。

 山が鮮やかな錦纏う秋が過ぎ、家々が白銀の帽子を被る冬が過ぎ、そして寒さに耐え身を縮めていた木々に新芽膨らむ春が来ました。あなたと離れて一年。あれから一度も顔さえ見せてくれなかったあなたは、私の事など忘れたのでしょうか。

 半年はあんなに長く感じたのに、一年はあっという間でした。人の心も移りゆくものでしょう。それは致し方ないと思います。会えずに過ぎ去る日々は記憶をも連れていってしまうのですから。私はあなたの事を諦める努力をします。私はあなたとの思い出を忘れる努力をします。愛しき人よ、さようなら。

 ふと窓の外に目をやると、暖かな春の陽気に誘われたのか親子が桜並木を手を繋ぎ歩いています。あなたと幾度も歩いた桜並木。私は窓にそっと手で触れ、それを眺めていると、忘れようとしているのに、次から次へと溢れ出てくるあなたとの思い出。私は苦しくなって窓から離れ、ソファーへと寝転びました。

 玄関のドアの鍵を開ける音がします。お母さんが帰ってきたのだろう。私はそう思い、瞼は閉じたままで出迎えにも行きません。そんな気分ではなかったから。すると部屋の入口に人の気配を感じました。でも、お母さんとは違います。ふと、瞼を開き、顔を上げる私へにこりと優しく微笑むあなたがいました。

 私は体を起こし、急いであなたの元へと走りより飛びつきました。はしたない事なんて分かっています。それでもそんな私をあなたは抱き寄せてくれました。あぁ、この温もり、この鼓動、この匂い。全てが、とても懐かしく、とても愛おしい。あなたは私の頭を、そして首や肩、背中を優しく撫でてくれます。

「にゃぁんっ」

 思わず声が漏れてしまいました。嬉しすぎてゴロゴロと喉まで鳴らす私にあなたは頬を寄せて言いました。

「みー……ごめんね、待たせちゃったね。お迎えに来たよ」

 私はそっとあなたの手を舐めると、ふふふっと笑ってくれた。もう、私を離さないでね。私にはあなたしかいないのだから。