パラサイト -Bring-

結局万由子の家に着いたのは十時を回ろうかとしていた頃だった。万由子は大丈夫だと言ったが、こんな時間まで男と二人で歩き回っていたとなれば、俺は何か話されるに違いない。こんな風に考えても、何も生まれないことは俺自身がよく知っているのに、頭に浮かんでしまうのは、弱さから来るものだろう。
「万由子、ずいぶん遅かったわね?」
「えへへ…紅馬くんといると楽しくて、つい」
玄関には両親そろって万由子を出迎えていた。俺の名前が出るまで、俺に気づかないくらい、万由子を見ていた。当然か。
「すみません、遅くまで連れ回して…」
謝れば済むとは毛頭思っていなかったが、合わせる顔もなかった。
「紅馬くん、万由子を守ってくれたんだものね。ありがとうね」
「…は?」
「この子、すごく自由奔放で楽観的だからちょっと心配で」
思い当たる節はいくつもあった。だが、そこが万由子の良いところだとも思っていた。