「お待たせー」


「珍しいな、時間かかるなんて......」


そう言いながら振り向いた怜は、そのまま固まってしまった。


「怜?」


呼びかけると、我に返ったように慌てていた。


「あー、わりぃ」


その言葉を不思議に感じながら、怜の次の言葉を待つ。


「いつもと、雰囲気、違うから......」


顔を赤くして言う怜に、気合い入れたかいがあったなあ、なんて。


「ふふっ。行こ!」


テンションが上がってしまった私は、怜を引っ張って家を出る。


「涼音、電車、いいのか?」


「うーん、たぶん、平気」


私は、酔いやすい。


特に人酔いが多くて、どうしても人混みになる電車は避けていた。


「怜も、いるし」


不安だけど、怜と話してれば気も紛れる。