「この私のプレゼントなのよ?こんな安っぽい花束なんて話にならないわ。もっと美しいドレスや宝石を贈るべきよ。……ああ、あなたたちの安い給料じゃ宝石なんて買えないわね」

マリーの刺々しい言葉に使用人たちは体を震わせ、俯いていく。マリーは見下すような笑みを浮かべたまま、「邪魔よ」と呆然とする使用人を押し除けて部屋を出る。部屋を出ると、立派な燕尾服を着たブラウンの髪をした華やかな顔立ちの男性が待っていた。

「アーサー」

マリーが声をかけると、窓の外をぼんやりと眺めていた男性はマリーに目を向ける。マリーの緑の目と男性の赤い目が絡み合った。

「マリー、そのドレスよく似合ってるよ。一緒にパーティーホールに行こう」

男性ーーーアーサー・スターリングはマリーの手を取り、その場に跪いて騎士が姫君にするように手の甲にキスを落とす。男性慣れをしていない人なら一瞬で恋に落ちてしまうようなシーンだ。

「私にドレスが似合っているのは当たり前よ。それに、婚約者をエスコートするのは当然のこと。待っていて当たり前」