マリーが思い返してみれば、アーサーの言う通りだった。結納はおろかアーサーからプロポーズすらしてもらっておらず、アーサーはマリーを褒めるが「愛してる」という言葉を言ったことは一度もない。

「俺が本当に愛してるのはルナだけだ。先月、結納を済ませたよ。今日はその報告に来ただけ」

あと、学園のみんな君がいなくなることに喜んでいたから、傲慢な態度を取らない方がいいと思うよ。殺されちゃうんじゃない?

最後にそう言い、アーサーはルナの腰に腕を回して歩いて行く。呆然とそれを見つめるマリーに見せつけるかのように口付けを交わし、二人は幸せそうな顔をしていた。

マリーが振り返れば、使用人たちの怒りや解放される喜びに満ちた目が向けられる。もうマリーのための王国はどこにもない。もうマリーの言うことを誰も聞かないのだ。

お姫様と呼ばれた人物は、一瞬にして地に落ちた。