「この屋敷はもう知人に手放す。お前はカトレア学園を退学して一緒に働いてくれ。使用人たちには暇を出した。荷物を今すぐお前もまとめるんだ」

「そんな……!」

受け止めきれない現実を突き付けられ、マリーは応接室を飛び出す。すると目の前にマリーの使用人たちがズラリと並んでいた。

「あんたたち、聞いてよ!お父様が変なことを言うのよ」

いつもならば、マリーを使用人たちは宥め紅茶を用意してくれる。しかし、使用人たちからは「お父様の言葉は嘘じゃないですよ、現実を見てください」と冷たく返された。

「私たち、ようやくあんたから解放されて嬉しいんです。フォスターという名前に怯えずに済むし、何よりあんたみたいな傲慢な人から離れられるんですから」

「なっ……!」

マリーの中に怒りが込み上がり、拳を握り締める。そして「主人に逆らうなんて」と言おうと口を開こうとすると、使用人たちはみんな笑った。

「もう誰もあんたの言うことなんか聞きませんから。もうあんたはフォスター家のお姫様じゃないんですからね!」