「水野先生?」
この声は…
肩を叩いた人物を見ると中島くんだった。
甚平を着ていて隣には同じクラスの沢口朱音ちゃんがいる。
「九条先生もいるんですか」
「そうだよ」
「先生たち付き合っているんですか!?」
ゆるふわで小柄な沢口さんが驚きながら聞く。
「付き合ってないよ」
「えー、カップルみたいな感じするよ〜」
「そうか?俺らお似合いだってめっちゃ言われるなぁ」
「今日はこんな格好してるからだよ」
「瑠璃の浴衣姿似合ってる」
「九条先生、水野先生のこと瑠璃って呼んでるんですか?」
「あぁ、まぁな」
その瞬間中島くんと目が合う。
一人でめっちゃ気まずい。
サンドイッチの具みたいに挟まれて心が動かない感じがする。
「奏、もう行こう、これ以上生徒から見つかるの恥ずかしいから」
「そうだな」
「水野先生と九条先生がいたってみんなに言っておくね!」
「沢口さんやめてね、付き合ってないし同僚として来てるんだから」
「はーーい、聖弥くん行こう!」
沢口さんが中島くんの腕に絡ませて歩いて行った。
2人こそお似合いに見えた。
なんで心が少しモヤモヤするんだろう。
中島くんは容姿端麗で頭もいい。
モテないはずがないんだから女子が近づくのも当たり前。
なのになんで気になってしまうんだろう。
中島くんを遠ざけたのは私なのに。
おかしいおかしい。
「瑠璃?」
「うん?」
「花火見ないのか、花火好きなのにずっと下向いてる」
「ちょっと下駄で足が痛いだけだから」
「そうか」
気にしない気にしない。
中島くんが沢口さんと何してようが私には関係ないんだから。



