「好きな人なんているわけない…」


私の呟きはエアコンの効いた英語教材室でぽつんと消える。


中島くんは積極的に話しかけてくるけどなんの真意かは知らないけど揺れるわけにはいかないからなんとか心を保たせて接しているけど、たまに中島くんの目を見ると、「俺は諦めない」と思っているのか強い意志を感じられて目を逸らして何故かドキドキするというのを授業中に繰り返してしまうから同じところを何度も教えるなどのアクシデントが出てしまって落ち込んでいる。




先生として頑張らなきゃいけないのんk、邪念が押し寄せて調子良くない。



「へー、瑠璃ならいると思ったのに」
「九条先生、いたんですか」



「ずっと前からいるし瑠璃に話しかけてるのに全然聞こえていなかったんか」
「ごめん」



「今は俺らしかいないからタメ口で」
「うん、分かった」



九条 奏(くじょう かなで)、同い年で1年前にこの学校に来て同じ学年を担当していたし、奏がフレンドリーだから仲良くなってお酒を飲んだり奏の趣味である映画鑑賞に一緒に行ったり仲の良い数少ない男友達である。


今年は奏も里帆も1年の担任になって頑張っている。


「瑠璃、好きな人いないんだ」
「まぁーね」



「恋で悩んでるのか?」
「悩みというかなんというか、、」



「曖昧なこと言うなよ」
「だってよく分からないから」


「よく分からないって気になる人がいるとか?」
「うーんまぁそうなるのかな〜」


「そこも曖昧かよ」
「はぁ、、恋って難しい」



「単純だろ、好きか好きじゃないかだろ」


奏の恋愛の話は前に聞いたことがあるけど、好きだと思ったら躊躇わず行動するタイプ。


だから恋で悩むとかなさそう。



「高校生の時はそれだけで一直線で行けたけど大人になるとさ簡単に付き合うとかできない気がする、ほら結婚とか考えなきゃいけない年齢になったし、、」


「でも好きって感情が1番だろそれがないと付き合うことすら無理だし一緒になれないと思う」
「それはそうだね」




「なぁ瑠璃」
「なに?」


「明日近くで花火大会があるけど一緒見ないか?今年は俺の高校は見回りしなくていいしゆっくり観れるからどう?」
「いいね、行こう!」